■ IEEE802.5とFDDI
博士、聞きそびれたことがあったんですけど。
何かね?
イーサネットってどういう意味です?
ネットはともかく、イーサってのは聞きなれない言葉なんですけど。
ふむ。もちろんネット、はネットワークだ。
イーサは、「ether」を辞書で引いてみたまえ。
ether:エーテル (古い物理学で光,熱などの媒体とされた仮説上の物質)
そう、つまりEthernetとはエーテルネットのことなのだ。
え〜っと…、疑似科学?
わははは。確かに光や熱を伝える媒体としてのエーテルってのは現代科学では否定されてるよな。
何故こんな名前がついているかというと、想像だが…。
博士の考えでは?
これから説明する、IEEE802.5やFDDIは信号の流れが制御されている。各デバイスを順序よく回っていく。
だが、イーサネットは信号が全体に伝わっていくわけだ。
そうですね、ブロードキャストでしたっけ。
うむ、その様が、エーテルによって全方位に運ばれていく光のようだ、って事でエーテルネット、イーサネットと名前がついた。
…と思う。
なるほど。
あくまでも想像だ。ホントかどうかは知らん。
ともかく、今回はIEEE802.5とFDDIの説明だ。さきほどもいったように、この2つは信号の流れが各デバイスを順序良く回っていく形になる。
IEEE802.5やFDDIはリング型トポロジでしたよね。
ぐるっと信号が回っていくわけですね。
うむ、その通り。この方式をトークンパッシングアクセス制御という。
IEEE802.5とFDDIはこのアクセス制御を使う。
とーくんぱっしんぐ?
■ トークンパッシング
うむ。トークンという制御フレームを使った方式だ。
図の方が説明が早い。下を見てくれ。
[Figure16-01:トークンパッシング]
トークンと呼ばれるモノが来た時だけ送信する権利がある、という方式だな。
もちろん、リングの中を流れるトークンは基本的には1つだけだ。
はわ〜。
トークンという配達人に、データを運んでってもらう形ですか。
うむ、なかなかいい例えだ。
トークンという配達人が、各家を御用聞きに回ってるわけだな。「運ぶものはないですか〜?」と。
で、運びたい物がある人は、トークン君にデータを渡すわけですね。
受け取ったトークン君は、いつもの配送ルートを守って宛先にデータを届ける。
そこで、受領印を押してもらう。そして配送ルートを一周して、送信元に戻る。
戻ったら、身軽になったので、また御用聞きに回る、と。
うむ。
この場合、トークン君は1人しかいないわけだから、同時に物を運べるのは一軒だけということになるな。さて、これはどういう事を表すのだ、ネット君?
え〜っと。同時に送信できるノードは1つだけってことですよね。
…。衝突が発生しない!
ふむ。
当たりだ、優秀メダルをあげよう。
やりぃ。
イーサネットのCSMA/CDのような衝突が発生しない。
CSMA/CDのように、衝突が16回発生したら送信取り消し、などという制限がなく、必ず送信できるということだ。
ふむふむ。
さらに、相手が受信したかどうか確実にわかる。
受領印を押してもらったトークンが帰ってきますものね。
なので、非常に堅固なアクセス制御方式だと言えるだろう。
工場のFA(ファクトリーオートメーション)や、銀行などのネットワークで使用される。
安全第一のネットワークで使われるんですね。
そうだ。だが、完璧ではない。
例えば、送信元が、ビジートークンを送り出した後故障したらどうなる?
そうですね…。ん〜、ビジートークンは宛先に届いて、受領印を押してもらって、送信元に帰ってくる。
帰ってきても故障して送信元がないから…。
フリートークンに戻らない。
そうすると、永久に他の誰も送信できなくなってしまう。
フリートークンがないと送信できないからですね。
そのような事がないように、監視するノードを置いておく。
なるほど。
■ トークンリング/IEEE802.5
さて、このトークンパッシングを使うIEEE802.5だが。
IEEE802.3がもともとXerox、intel、DECの3社が作り出したDIX-Ethernetを標準化したように、実はもとの規格が存在する。
そうなんですか?
うむ。トークンリングという規格で、IBMが1970年代に開発したものだ。▼ link
イーサネットとIEEE802.3がほとんど変わらないように、トークンリングとIEEE802.5もほとんど変わらない。
へぇ、IBMッスか。
トークンリング/IEEE802.5は、LANの仕様として、先ほど話したトークンパッシング、同軸もしくはツイストペアケーブル、リング・スター型トポロジを使う。
スター型?スター型だと、中央にハブがあるんですよね?
ハブは来た信号をみんな流してしまいますけど、どうやってトークンを順序よく循環させるんです?
うむ、ハブを使うのは確かにハブを使うのだが。
トークンリング用の特殊なMSAUというハブを使う。
下図のような形になる。
[Figure16-02:MSAU]
半透明の青い部分がMSAUだ。
まあ論理的にはリング型で繋げている形になるな。
ははぁ。ところで博士、なんでイーサネットのほうが主流なんです?
トークンリングのトークンパッシングの方が衝突がなくて優れていると思うのですけど?
ふむ、それはな。CSMA/CDの方が制御が簡単なせいで機器が安くつくからなのだよ。
前も話したが、「使ってなかったら送る。駄目だったらもう1回」というなんとも明確な制御方式だからな。
配達人にまかせとけ、のトークンパッシングも十分簡単に思えますけど。
だが、先ほども話した、監視役が必要だったりするわけだ。
あとは4Mbpsもしくは16Mbpsというデータ転送速度が問題なのかもしれんな。
ははぁ。スピードに費用ですか。
そりゃ負けてもしょうがないかもなぁ。
■ FDDI
さて、もう1つのトークン・パッシング方式のLAN仕様が、ファイバ分配データ・インターフェイス、FDDIだ。
これは二重リング型トポロジ、光ファイバを使うのが特徴だ。
ん〜っと、光ファイバを使ったIEEE802.5って感じなんですか?
そうだな、その発想はあながち間違ってはいない。
違うところはまず、光ファイバなのでデータ通信速度が速いこと。
光ファイバですものね、そりゃ速いですよね。
100Mbpsで、最長20KmのLANを作り出せる。
さらにIEEE802.5と大きく違うのは、二重リング型トポロジであるというところだ。
下の図を見て欲しい。
[Figure16-03:二重リングトポロジ・FDDI]
前も話したが、二重リングのうち1つは予備として使わない。
使う方をプライマリ・リング、予備の方はセカンダリ・リングという。この2つのリングは、逆向きに信号が流れる。
ぷらいまりとせかんだりですか。
うむ。
これらのリングに接続されるのは、DASとSASだ。これも図で説明しよう。
[Figure16-04:FDDI:DASとSAS]
DASは両方のリングに接続された機器のことだ。プライマリのinとout、セカンダリのinとoutの4つの接続点を有する機器だな。
この機器は障害を検知して、セカンダリの使用を決める監視役も務める。
ははぁ、DASっていう専用の機器なんですね?
いや、FDDIへの接続可能なデバイスのことだ。
別に普通のコンピュータでもいい。
なんだ、そうなんですか。
で、コンセントレータってなんです?さっきは出てきませんでしたけど。
うむ。簡単に言うと、ハブのことだ。
ハブの機能の1つである、メディアの集線をする装置という意味で使われる。
ハブの機能の1つ…、あぁハブには増幅って機能もありましたっけ。
そうだ。イーサネットに使われるハブにはそういう機能もある。
コンセントレータは、複数のSASと接続される。SASはプライマリ・リングとしか接続されない。
っていうことは、プライマリ・リングに何か起きたら繋がらなくなるんですね。
そうとは限らない。以下のようにコンセントレータが繋がっているポイントが直接障害が起きない限り、大丈夫と言えば大丈夫だ。
[Figure16-05:二重リングでの障害発生]
あ〜、なるほど。切り替えポイントになるわけですか、DASって。
折り返して必ずリングになるようにするんですね。
そうだ。FDDIの特徴といえば、まずは二重リングによる高い信頼性だ。
これはトークン・パッシング制御方式の、確実に届けることと組み合わさって、非常に高い信頼性を誇ることになる。
リングが1つ切れても、もう1つでなんとかなるってことですね。
で、トークン・パッシングだから、必ず送信できるし、相手に届いたかどうかもわかる、と。
そうだ。
かつ、光ファイバの高データ転送速度。
うわ、なんか無敵ですね。
そうなる。ただし、値段の方も無敵だがな。
光ファイバが高い上、DAS、コンセントレータなどの接続機器も高い。
あららら。
なのでまあ、普通のLANにはあまり使わないな。データ転送速度だけなら、ファストイーサネットや、ギガビットイーサネットもある。
さらにイーサネット用のネットワーキング・デバイスが、衝突の発生を減らすことも行うしな。
ははぁ。
なので、どちらかといえば、イーサネットをしっかり覚えておくことの方が重要だ。
正直言って、IEEE802.5やFDDIはあまり触ることがないであろうからな。
あぅ。
じゃあ今回はいったい何のために…。
やれやれ。ネット君。君には知的好奇心というものが足りないようだな。
知的好奇心がないのは、人間とは言えんというのが私の持論だ。
うぐっ…。
まぁ、いいだろう。これから人間になればいいだけの話だ。
はやく人間になりた〜い。
古いな、ネット君。君はいつの生まれだ?
ともかく、次回はネットワーキング・デバイスの説明だ。まずは、ブリッジから行う。
了解。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- 疑似科学
-
「トンデモ本の世界」とかで紹介されてる、怪しげな科学。
相対性理論は間違ってるとか、宇宙はエーテルにみちているとか、そういうの。
- トークンパッシング
-
[token passing]
tokenはしるし、証拠などの意味。
送信権を持つ「しるし」が、各ノードを通過[pass]していくという制御方式。
- 1つだけ
-
Early Token Release機能を使えば、同時に複数存在することができます。
ただし、フリートークンはやはり1つだけです。
データを送信したノードは、新たなフリートークンを先ほどのトークンの後を追いかけるように1つリング上に送り出します。
この場合、1周してきたビジートークンは消されてフリートークンとして再送信されません。
これにより、リングを循環しているフリートークンは1つだけになります。
- 優秀メダル
- キャプテントーマス手作り。
- 監視するノード
- アクティブ・モニタといいます
- トークンリング
- [Token Ring]
- IBM
-
[International Business Machines]
IBM社。
コンピュータの老舗。世界最大のコンピュータメーカ。
- MSAU
-
[MultiStation Access Unit]
マルチステーションアクセスユニット。
- プライマリ
-
[primal]
最初の、主要な、という意味。
よく使われる言葉なので覚えておくと役に立つことが多い。
プライマリIDEとか、プライマリドメインコントローラ、とか。
- DAS
-
[Dual Attachment Station]
デュアル・アタッチメント・ステーション。
クラスAステーションとも呼ぶ
- SAS
-
[Single attachment station ]
シングル・アタッチメント・ステーション。
クラスBステーションとも呼ぶ
- コンセントレータ
-
[concentrator]
集線装置。複数の回線を1つにまとめる。
- ネット君の今日のポイント
-
- IEEE802.5とFDDIはトークン・パッシング制御方式を使う。
- トークンという制御データを使う。
- 衝突が発生しない。
- 宛先に届いたかどうか確認できる。
- IEEE802.5はリング・スター型トポロジで、同軸かツイストペアを使う。
- FDDIは二重リング型トポロジで、光ファイバを使う。
- IEEE802.5とFDDIはトークン・パッシング制御方式を使う。