■ イーサネット・おさらい
前回、イーサネットの話をしたな。
ええ。繋がっているすべてのノードへフレームを送りつけるブロードキャスト型で、CSMA/CDでアクセス制御をしてると。
うむ。
まず前回話損ねたことから話そう。
はい。
イーサネットでは、衝突が発生する。
衝突のシステムはどうだった?
え〜っと、基本的に誰かが送信している間は、他の人は送信できないんですよね。
でも、誰も使ってないな〜と思って送信を始めた時に…。
まだそのフレームが届いてない人が、誰も使ってないと思って送信を始めてしまう。
この場合1本の銅線しかない同軸ケーブル上に2つの信号が交差するため衝突が発生する。
…言いかけてたのに。
うむ。衝突が起きたわけだ。
それで、衝突が起きると…。
信号がおかしくなって、エラーになるんですよねっ。
それは邪魔でしかないっ。
…の野郎。
へへへ、お返しですよ。
よかろうネット君。そちらがそう出るならばこちらにも考えがある。
ちなみに言っておくが、私の辞書には「職権乱用」は合法と書いてある。
ヤな辞書ですね。
前途有望な若者が、たかが1単位落としただけで留年し、未来への道を閉ざしてしまうなんて。
まったくもって遺憾でしかない。うむ。教師とは素晴らしい職業だな。
博士、洒落になりませんよ、その発言は。
■ 半二重・全二重
マジな話はさておいて。
…マジだったのか。
イーサネットでは正常な通信時には、自分は送信しか行っていない。
受信できることはできるが、受信した場合はそれは衝突が発生した証だからな。
そういうことになりますよね。
さらに、他の人が送信中である場合は、もちろん自分は受信のみ、送信は行えない。
キャリア検知(CS)ですよね。
つまり、送信のみか、受信のみのどちらか一方しか各ノードは行えない。
イーサネットは半二重通信方式であるということだ。
はんにじゅう? 半分だけ二重?
つまり、トランシーバーでの通信だな。
自分が話しているときは、相手の声が聞こえない。相手が話しているときは、相手に自分の声は伝わらない。
イーサネットなら、誰かが送信中は、自分は送信できない受信のみ。自分が送信中は、他は送信できないので、もちろん自分は受信をしない。
確かにトランシーバーで話しているみたいですね。
ちょっと効率が悪いよな。
同軸ケーブルを使用するイーサネットでは仕方がないのだが。
同軸ケーブルを使用する、って他のなら大丈夫なのですか?
うむ。光ファイバや、ツイストペアケーブルなら可能だ。
ツイストペアを例にとろう。ツイストペアは8本4組だったな。
[Figure15-01:UTPによる接続]
上の図のように、実はツイストペアケーブルの8本4組のうち、2本1組はこちらの送信側と相手の受信側。
別の2本1組はこちらの受信側と相手の送信側に接続される。
残りの4本2組は?
使われていない。まあ、将来的な発達余裕と思っていてくれ。
この状態だと、相手の送信と自分の送信は同じ道を通らない。つまり、ツイストペアならば衝突は発生しない。
うわ、前提条件が…。
そうなると、相手が送信していても、送信が可能になる。衝突しないからな。
このような、同時に送信・受信が可能な方式を全二重通信という。
なら、何故イーサネットは半二重なんて話をしたんですか?
上の例は、あくまでも1対1で接続した場合だ。
リピータ・ハブを使った場合、以下のようになる。
[Figure15-01:ハブを使った接続]
リピータのポートまでは送信・受信別々の組で接続されているのだが、リピータの内部は送信・受信でわかれていない。
そうなると…。
そうなると?
結局は、リピータの内部で衝突が発生する。
元の木阿弥だ。もちろんこれはハブでも同様だ。
あぅ。
つまりリピータのポートとポートが同軸ケーブルで繋がれているようなものだから、結局は同軸ケーブルで繋いでいるのと同じだと。
別にリピータはポートとポートを同軸ケーブルで繋いでいるわけではないが、考え的にはそれで正解だ。
ははぁ。
だが、せっかくツイストペアならば全二重通信が可能なのに、これはもったいないだろう?
それはそうですね。
スイッチならば内部で衝突がおきない仕組みをもっているので、全二重通信が可能になる。
へぇ。どうやってです?
それはスイッチの説明の時に話す。
もうちょっと待て。
はい、了解です。
■ Fast Ethernet/Gigabit Ethernet
さて、いきなりツイストペアの話がでたが。
前回、イーサネットは同軸ケーブル(10Mbps)を使用すると言ったな。
えぇ。
イーサネットが開発された段階で、同軸ケーブルが主流だったからそれが規格になった、と。
だが、それは1980年前半の話だったわけだ。
情報通信の世界で、20年前といえば、そうだな生物が初めて陸に進出した時代に匹敵する。
ごっつい例えですね。
この世界。10年どころか1年ひと昔だ。
まるで去年の紅白歌合戦で歌われた曲を誰も覚えていないみたいな感じですね。
なんとも微妙な比喩だな、それは。
ともかく技術の進歩が圧倒的なので、それに応じてIEEEも規格を拡張している。
へぇ。ちゃんと対応してるんだ。
うむ。日本のお役所仕事とは一味違うな。
まず、IEEE802.3に、ツイストペアや光ファイバを使用可能にした。これが、1990年代初頭。
ふむふむ。
そうこうしているうちに、スピードの問題が発生した。
100Mbpsのケーブルの登場だ。
今でも使われてる、100BASE-TX、カテゴリー5ですよね。
光ファイバの100BASE-FXも忘れるな。
そこで、IEEEはIEEE802.3の拡張仕様を作成した。ファストイーサネット。規格名で言えば、IEEE802.3uだ。
なんか速そうな名前ですね。
事実10倍の100Mbpsだから速いな。
これの素晴らしいところは、下位互換であるところだ。
かいごかん?
つまり、今までのイーサネットの機器と併用して使えるということだ。
イーサネットと同じフレーム形式、CSMA/CDを使用する。
つまり、スピードは上がったけど、イーサネットには変わりない、ということですか?
例えば、ファストイーサネット仕様のNIC。でもケーブルは10BASE-T。
ケーブルは100BASE-TXだけど、ハブはイーサネット仕様。こういう形の混在でも大丈夫だ、ということだ。もちろん100Mbpsとして使えないがな。
ははぁ。そりゃ便利ですねぇ。
ファストイーサネットと、イーサネットの違いといえば。
同軸ケーブルが規格から外れたこと、それに応じてバス型物理トポロジが使えなくなり、スター型のみになったこと、ぐらいだな。
それだけですか?
他にもこまごまとあるが、大きな違いといえばそれぐらいだな。
ちなみにファストイーサネットが、規定されたのは1995年のことだ。
ふむふむ。
とかなんとか技術の進歩に合わせているわけだが、ついにギガビットの時代の到来した。
ギガビットイーサネットだ。
ぎがびっと!
1000Mbpsですから、イーサネットの100倍かぁ。
これは2つの規格がある。
光ファイバを使うIEEE802.3z。ツイストペアを使うIEEE802.3ab、の2つだ。
802.3u、802.3zで次が802.3ab。
10ギガビットイーサネットは802.3cdぐらいかなぁ?
おしい。
10ギガビットイーサネット。IEEE802.3aeだ。
うわ、安直。
ともかく、これもイーサネット、ファストイーサネットとの下位互換だ。
フレーム形式、CSMA/CDを相変わらず使用する。
なるほど。
うむ。イーサネットの話はこれで終わりだ。
次回は残った2つのアクセス制御方式、IEEE802.5とFDDIの話をする。
いぇっさ〜。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- 洒落に…
-
インター博士は、実在の講師をモデルにはしているわけではありません。
えぇ、していませんとも。
- 半二重通信方式
-
[half-duplex]
送信のみ、受信のみどちらか一方を選択して切り替える通信方式。両方同時にはできない。
送信専用、受信専用同士で通信を行う方式を、単向通信[simplex]と言う。
- 全二重通信
-
[full-duplex]
送信と受信が同時に行える方式。例えば電話。
- 1対1
- このような通信方式をポイントツーポイント[point to point]と言う。
- リピータ内部で…
- なのでツイストペアを使用するリピータ・ハブの場合、jam信号をリピータ・ハブが送信し、衝突が発生したことを伝えます。
- 全二重通信が可能
- スイッチも必要ですが、NICが全二重通信に対応している必要があります。
- ファストイーサネット
-
[Fast Ethernet]
ファースト、ではありません。
- ギガビットイーサネット
- [Gigabit Ethernet]
- ネット君の今日のポイント
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- イーサネットは半二重通信方式である。
- スイッチを使用すると、全二重通信が可能になる。
- 100Mbpsのファストイーサネット、1000MbpsのギガビットイーサネットもIEEEで標準化されている。
- ファスト、ギガビット両方とも、イーサネットと下位互換性がある。