3 Minutes NetWorking
No.10

3MinutesNetWorking

第10回レイヤ1 リピータ・ハブ

■ レイヤ1のネットワーキングデバイス

インター博士

くどいようだが、レイヤ1は物理的な仕様だ。

ネット助手

ええ。それは何度も聞いてます。

インター博士

うむ。繰り返しが学習の基本だからな。特にネット君には多大にそれが必要だ。

ネット助手

多大って、そこまで…。

インター博士

自分の能力を正確に見極めるということは必要だぞ、ネット君。
ともかく、今回はレイヤ1でのネットワーキングデバイスの説明だ。メディア上を流れる信号を制御する機器だな。

ネット助手

LANの機器の説明のところでちらりとでてきた奴ですね。

インター博士

うむ。
リピータハブという2つの機器を説明する。2つは本質的には同じ機器だ。

ネット助手

信号を増幅したり分配する、と前の説明ででてきましたが?

インター博士

まあまあ、そう焦るなネット君。
今回はちゃんと説明する。

ネット助手

はい。

■ リピータの機能

インター博士

信号の説明ででてきたように、信号は減衰する。これは抵抗がある限り避けられない。
さらには、ノイズが入って信号の形が壊れてしまうこともある。

ネット助手

そうでしたね。
ノイズは、メディアのシールドやキャンセレーションで防げますけど。

インター博士

確かにシールドやキャンセレーションで防げはするが、万全ではない。
なので、メディアには最長距離が存在する。例えば、UTPは何mだった?

ネット助手

え〜っと、100mです。

インター博士

うむ。
では、もし同じLANに繋ぎたいパソコンとパソコンが100m以上離れていたらどうするのだ?

ネット助手

…。それは全く想像してませんでした。

インター博士

うむうむ。相変わらず想像力が貧困そうだな。
つまり、弱まったり、ノイズが入ったりして100m以上は届かない。さらに言うと、メディアの途中にパソコンがあるだけで、信号は減衰したり、形が崩れる。

ネット助手

そうなんですか?

インター博士

なので多くのパソコンが接続されていると、なおさら信号は劣化してしまう。
これをどうにかするのが、リピータの機能だ。

ネット助手

…増幅?

インター博士

そうだ。
リピータは弱まったりノイズが入った信号を、増幅や整形して、元の信号と同じ強さ、同じ形に直す。

[Figure10-01:信号の増幅・整形]

インター博士

大雑把に図にすると、上のような感じだ。
リピータに入った信号は、もう1度もとの形と強さを取り戻す。

ネット助手

なるほど。

インター博士

もとの強さと形を取り戻すことによって、より遠くまで信号が届くようになったわけだ。

[Figure10-02:距離の延長]

ネット助手

ははぁ。信号増幅機って感じなんですね。

インター博士

それはわりと正しい見方かもしれん。リピータは信号を増幅するだけなのだ。
これから先にでてくるスイッチやルータのように制御をしない

ネット助手

制御をしない、ってのは?

■ ハブ

インター博士

まあ待て。先にハブの話をさせろ。
ハブは別名マルチポートリピータと呼ばれる機器だ。

ネット助手

まるちぽーと?
まるちなぽーとのリピータってことですか?

インター博士

そのまんまだな
つまり、多くのケーブルを差し込むことのできるリピータの事だ。通常リピータは、入り口と出口、2本のケーブルを繋ぐことしかできない。

ネット助手

多くってどのくらいです?

インター博士

それは製品によるな。もちろん多く差し込めるものの製品の方が高い。
だいたい、4本、8本、12本、16本、24本ぐらいが一般的かな。業務用になるともっと多いのもあるが。

ネット助手

へぇ。

インター博士

なので、多くの機器を繋ぐ時に使用される
LANでは最も一般的な機器といってもいいだろう。逆にハブがないと1対1の接続しかできないといっても過言ではない。

ハブ

[Figure10-03:ハブによる接続]

ネット助手

普通のLANは1対1じゃないですよね。
そうか、多くのパソコンをハブで繋ぐのか。

インター博士

そうだ。LANの中心点、メディアの接続地点として使われる。まさしく、ハブという名前そのままの役割だ。
もちろんマルチポートリピータという別名に恥じず、リピータの役割も持つ

ネット助手

ということは、信号の増幅や整形も行うってことですか?

インター博士

その通りだ。
なので、リピータであったように、遠くまで信号を届けることができる。例えば下図のように。

キャッチメントエリア

[Figure10-04:キャッチメントエリア] 

インター博士

黄色の円中の部分は、2つのハブによって信号が増幅されるので、一番右上と一番左下のコンピュータ同士でも信号のやりとりが可能になる。

ネット助手

なるほど。

■ 共有メディア環境

インター博士

さらに、ハブを使用した場合、多くの機器が接続されるわけだが。
どれか1つの機器からでた信号は、すべての機器に届く。これまた図で説明しよう。

[Figure10-05:ハブと信号]

インター博士

さきほども言ったとおり、リピータは増幅するだけ、なんの制御も行わない。
ハブも同様に、多くのメディアを接続するが、やることは同じ単なる増幅のみだ。つまりきた信号をそのまま全部に流す

ネット助手

制御を行うと違うんですか?

インター博士

うむ、スイッチやルータはきたデータを繋がっている全部に流すわけではない。
それについては、先々でやっていくので楽しみに待っていなさい。

ネット助手

はい。

インター博士

話を戻してハブの話だ。ハブはきた信号をそのまま繋がっているすべてに流してしまう。
この場合、上の図で、青のメディアAと、緑のメディアBの違いは何だ?

ネット助手

繋がっているパソコンが違います。

インター博士

確かに繋がっているパソコンは違う。
だが、通過する信号という観点から見た場合、全く違いはない

ネット助手

そうですね。
どのパソコンが送信した信号でも、全部通過していきますからね。

インター博士

つまり、信号という観点からみれば、ハブを中継点として使ってはいるのだが、すべての機器は同じメディアを使用しているのと同じだ。

共有メディア環境

[Figure10-06:共有メディア環境]

インター博士

上図の左と右は全く同じ意味だ。
このように、同じメディアを複数の機器が使用している環境を共有メディア環境という。

ネット助手

実際には違うメディアなんですけど、意味的には同じメディアをみんなが使ってるって形だってことですよね。

■ 衝突ドメイン

インター博士

このような環境では、信号の衝突が発生する可能性がある。特に、同軸ケーブルのように伝送路が1つの場合は1車線しかないようなものだからな。

ネット助手

ツイストペアなら大丈夫なんですか?

インター博士

確かにツイストペアならば、8本4組なので伝送路を複数持つ。
だがハブの内部が1つの伝送路しか持たないので結局同じだ。

ネット助手

なんだ、そうなんですか。

インター博士

衝突が起きた場合、信号の形が崩れて正しいデータとして認識されなくなる、という話は以前したな?

ネット助手

ええ。聞きました。
信号と信号がドカッとぶつかって、電圧がおかしくなってゴワッと信号の形が変わっちゃうんですよね、きっと。

インター博士

擬音を頻繁に使うのは、語彙が貧弱な証拠だぞ。ネット君。
ともかく、ネット君風に言えば、ゴワッと形が変わってしまった信号も、すべての機器に届くわけだ。

ネット助手

そうですね。ハブは信号を垂れ流すわけですから。

インター博士

その正しくない信号は、ネットワークにとって邪魔ものでしかない。データとして正しくなくても、流れている間は道をふさいでしまうからな。
この衝突が発生する可能性がある範囲のことを、衝突ドメインという。

ネット助手

衝突ドメインですか。

インター博士

うむ。衝突はネットワークにとって邪魔なので、なるべく影響が及ばないようにするのがネットワーク管理の実践テクニックだ。
つまり、この衝突ドメインを狭くするということを考えるわけだな。

ネット助手

ははぁ。

インター博士

ハブは、信号を流すだけなので、この衝突ドメインを狭くすることはできない
逆に、衝突ドメインを広げてしまう

[Figure10-07:衝突ドメインの拡大]

ネット助手

へぇ。じゃあ衝突ドメインを狭くするにはどうすればいいんですか?

インター博士

それは、スイッチやルータを使うことだ。
特に衝突ドメインが大きくなると、つまりたくさんの機器が接続されるようになると衝突の可能性があがる

ネット助手

混雑するから、ぶつかることも多くなりますよね。

インター博士

そうだ。衝突で壊れたデータでもデータはデータ。伝送路を流れてしまう。
よって、ネットワークの利用効率が下がるわけだな。衝突ドメインを狭くしなければならない理由はこのためだ。

ネット助手

ふむふむ。

■ リピータ・ハブ同士の接続制限

インター博士

スイッチやルータはまた先の回で説明するからよいとして。
さて、ハブやリピータは信号を増幅するから、届く距離が長くなるよな。

ネット助手

はい。

インター博士

では、リピータやハブを連続しておいていけば、無限に信号を届けることができるのか?

ネット助手

え?
…。そういうことになりますよね。違うんですか?

インター博士

違わない。
だが、リピータで増幅の際に多少の時間がかかるのだ。あまりに多くリピータを使うと、その遅延時間が多くなりすぎる。

ネット助手

はい。

インター博士

そうすると、こっちの機器と向こうの機器で、受け取る時間に差ができることになる。
もしかすると、その時間差の間に他の機器が送信を行って衝突が発生するかもしれない。

ネット助手

そういうことも起こりえますよね。

インター博士

なので、一応ルールとして、途中経由していいリピータ(ハブ)は10BASE-Tなら4つ、100BASE-Tなら2つとされている。

ネット助手

へへぇ、そうなんですか。

インター博士

実際、LANを設計してると忘れがちになってしまうので、頭のスミにでも覚えておくといいかもしれん。

ネット助手

了解です。

インター博士

さて、次回もレイヤ1の話が続くぞ。

ネット助手

長いッスね。

インター博士

レイヤ1、2、3は重要なので時間がかかるのだよ。

ネット助手

了解です。がんばります。
3分間ネットワーキングでした〜♪

ネットワーキングデバイス
[Networking Device]
通信制御機器。ハブ、スイッチ、ルータなどを指す
最長距離
最長セグメント長という言い方もします。
届かない
実際は届かないわけではない。
最長距離は、正確に届くという保障がされている距離である。
ポート
[port]
港、荷積み口などの意味を持つ。
コンピュータの用語では、データの受け渡しの口という意味で使われる。
今回の場合は、ケーブルの差込口という意味。
信号の増幅や…
行わないハブも存在します。このようなハブをパッシブ[passive]ハブといいます。
単に集線装置としてのみ機能します。
伝送路
[Transmission link]
信号が通る経路。
同軸ケーブルの10BASE5や2の場合は多重化を行わないベースバンド方式なので、1度に1つしか信号が通らない
衝突ドメイン
[collision domain]
もしくは、コリジョンドメインという。
ドメイン
[domain]
いくつかの意味を持つが、基本的には管理範囲という意味で捉えておいて間違いはない。
衝突ドメインの場合は、衝突の影響が及ぶ範囲という意味になる。
キャッチメントエリア
[Catchement Area]
「担当区域」の意味。
ハブを中心としてUTPの場合100mの円内を指す。そのハブがカヴァーできる範囲のこと。
ネット助手ネット君の今日のポイント
  • リピータ・ハブは減衰やノイズの入った信号を増幅・整形する。
  • ハブは多くのメディアの接合点として使われる。
  • リピータ・ハブは制御を全く行わないため、きた信号をすべてに流す共有メディア環境を作り出す。
  • 衝突の影響が及ぶ範囲のことを衝突ドメインといい、リピータ・ハブは衝突ドメインを広げる。
  • リピータ・ハブを連続して繋げていいのは、4つもしくは2つまで。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp