■ ネットワーキングメディアの種類
さてさて。レイヤ1といえば、こまごまとした物理的な仕様だ。
はい。
本来ならば、電圧やら、周波数やらコネクタのピンの数と形状まで入っているので、そこまでやらねばならん。
そ、そこまでッスか。
うむ。
だが、正直そこまではやっておれん。なのでそういうのは、自分で別に勉強してもらうとしてだ。
うわ〜、なんとも投げやりな。
(ギロリ)
あ、はは。そうですよね。そういうのは自分で勉強した方が早いですよね、ええ。
うむ。わかってもらえて嬉しいぞ、ネット君。
無益な殺生はしないにこしたことはないからな。
無益な殺生って。殺される所だったんですか?
そうならなかったから、よいではないか。
さて、今日話すのはネットワーキングメディアだ。
あんまりよくないような。
何かね、ネット君?
いっ、いいえ。なんでもないです。お話を続けてください、博士。
うむ、ネットワーキングメディアといっても、主にLANで使われるメディアの話をする。なんといっても、触る機会も多いし、自分で使うものである。
WANメディアは第一種電気通信事業者の、技術者にでも任せておけばいい。
なるほど。決して知らないから話さないわけではないんですね。
どうも今日のネット君の顔は、他人に殺意を芽生えさせる顔つきだな。
で、なにか言ったかね?
いえいえ。何も言っていません、はい。
うむ。
今日は3種類のネットワーキングメディアの説明をする。
銅線と、光ファイバと。もう1種類はなんです?
銅線は2種類あるのだ。よって、銅線2種と光ファイバの3種類だな。
ふむふむ。
■ ネットワーキングメディアの規格団体
これらネットワーキングメディアは、3つの規格団体が影響力を持っている。
特にIEEEとEIA/TIAの2つの団体名は覚えておくように。▼ link
EIA/TIAは、前にEIA/TIA-232ってケーブルの名前で出てきましたね。
もう一つは、あい・いー・いー・いー?
アイ・トリプルイーと読んでくれ、頼むから。
はぁ、とりぷるいー、ですか。なんかかっちょいいですね。
で、3つとおっしゃいましたけど、もう1つは?
ULという。製品の安全性を試験する団体だ。▼ link
ケーブルの素材が可燃性であったり、発ガン性物質を含んでないかチェックする団体だと思ってもらえればいい。
ははぁ、そんな事までちゃんとしてるんですねぇ。
で、3種類の団体が規格してる、3種類のケーブルとは?
ふむ、上手く話を進行させるな、君は。
ま、いいだろう。3種類とは同軸ケーブル、ツイストペアケーブル、光ファイバケーブルの3種だ。
ふむふむ。
■ 同軸ケーブル
まずは、同軸ケーブルから説明しよう。
同軸ケーブルはLANケーブルだけでなく、TVのアンテナ線などに使われている。大雑把に書くとこんな構造になる。
[Figure09-01:同軸ケーブル]
ほんと、大雑把ですね。
悪かったな、絵心がなくて。
はわっ、博士が書いた絵なんですか。
いや、なんというか味のあるいい絵ですね。
覚えてろよ、ネット君。
ともかく、中央の茶色が導体となる。銅製だ。ここに信号が通ることになる。
ふむふむ。
導体の上にあるのは、プラスティックの絶縁体。一番外側にあるのもプラスティック製の皮膜(ジャケット)だ。
じゃあ、黄色の網状のものはなんです?
うむ。これは銅、もしくは金でつくられた網状の素材で、シールドと呼ばれる。
名前の通り、外部からの干渉を防ぐ盾となる。
前回でてきた、無線なんちゃら干渉とか、電磁干渉とかそういうのから防ぐわけですね。
うむ、今日はさっしがいいな。その通りだ。
このシールドがあるおかげで、同軸ケーブルは干渉に強い。さらに、干渉の影響が少ないため長距離まで信号が届く。
へへぇ。いい事づくめですね。
ただし、この頑丈なシールドのせいで後述するツイストペアケーブルより堅い。かつ高価になってしまっている。
あらら、いい事ばかりではないんですね。
うむ。なので現在、EIA/TIAの規格ではLANに同軸ケーブルを使うのは推奨されていない。
次は現在のLANケーブルの主流である、ツイストペアケーブルだ。
■ ツイストペアケーブル
[Figure09-02:ツイストペアケーブル(UTP)]
うむ。我ながらカラフルに書いてしまったが、ツイストペアケーブルは実際は8本の細い銅線をまとめた構造をしている。
さすがに銅線を剥き身でまとめるわけにはいかんので、絶縁体のプラスティックでコーティングしてあるが。
へへぇ。なんか2本ずつクネクネしてるのは意味があるんですか?
うむうむ。非常に重要な点だ、ネット君。
8本を2本ずつ4つの組にして、お互いを交互により合わせているのだ。ちょっとわかりづらいかもしれんが、このようにだ。
[Figure09-03:ツイスト(撚り)]
はぁ。なんか意味あるんですか?
より合わせることによって、電流が流れた際に2本の銅線から発生する磁場が互いに打ち消しあって消滅するのだ。これが外からの干渉も消滅させることができる。
これをキャンセレーションという。
なんか、高等テクニックですねぇ。
このように2本をより合わせていることから、ツイストペアと言う名前がついているのだよ。
さらに、上の図のツイストペアは、非シールドツイストペア、略してUTPと呼ばれる。
そういえば、シールドがありませんよね。
ん? わざわざ「非シールド」とつけるってことは、「シールド」もあるってことですか?
どうした、ネット君。熱でもあるのか? 今日はスルドイぞ。
確かに、シールドツイストペア。略してSTPと呼ばれるケーブルも存在するが、あまり使われることがないため今回は省略する。
へぇ、シールドがないかわりにキャンセレーションで干渉を防いでいるんですね。
うむ、一応そうだ。だが、シールドほど干渉に対する防御力が高くないのも事実だ。なのでUTPはあまり長距離まで信号が届かない。
その分、堅いシールドがないから柔らかいし、安価だ。
へへぇ、ちょうど同軸ケーブルと対極になってるんですね。
そうだな。そう考えるのが楽かもしれん。
最後が光ファイバケーブルだ。
■ 光ファイバケーブル
[Figure09-04:光ファイバケーブル]
中央の黄色の線が反射率の高いガラスで作られた、信号が通る部分だ。
周りをいつものようにプラスティックで覆っている。
その外の、ピンクの部分は?
これは緩衝保護材だ。ケブラーという防弾チョッキにも使われている繊維で中のガラスを保護している。
なんといってもガラスだからな。脆いという弱点がある。
ふむふむ。
このガラスの中に通すのは、もちろん光だ。
1本の強力なレーザー光を通すタイプをシングルモード。複数の弱い光を反射させるタイプをマルチモードという。
光ファイバって、1種類しかないと思ってましたよ。
さて、特徴といえば。もちろん光信号のため、一切の電磁的な干渉を受けない、という点があげられるな。
かつ高速だというのもある。
だけど、高価である、と。
ふむ。ほんとにネット君か? 冴えてるぞ今日は。
言うとおり高価であるし、ある程度の技術力がないと使うのは難しい。そこら辺が弱点だな。
なるほど、まとめるとこんな特徴があるわけですね。
特徴 | 同軸 | UTP | 光ファイバ |
---|---|---|---|
干渉 | シールドがあるため強い | キャンセレーションで防ぐ。だが、弱い | 光信号のため、影響なし |
値段 | 中 | 低 | 高 |
敷設 | ちょっと難 | 易しい | 難 |
速度 | 中 | 高 | 高 |
コネクタ | BNCコネクタ | RJコネクタ | マルチモードコネクタ |
[Table09-01:ケーブルの違い]
この偽者めっ!
本物のネット君をどこへやった!
何言ってるんですか、偽者もなにも、僕がネットですよう。
確かに、見た目はネット君だ。
しかし、信じられん。あのネット君がこれほどの理解力を示すとは。
…。
■ ネットワーキングメディアの規格
ともかく。これらのケーブルは、さきほどのIEEEやEIA/TIAによる標準化がなされている。
まず、IEEEの規格はこのようになっている。
規格名 | ケーブルの種類 | 備考 |
---|---|---|
10BASE5 | 同軸 | 別名:Thicknet(シックネット) |
10BASE2 | 別名:Thinnet(シンネット) | |
10BASE-T | UTP | 最長距離:100m |
100BASE-TX | 最長距離:100m | |
1000BASE-T | 最長距離:100m | |
100BASE-FX | 光ファイバ | 最長距離:マルチモード412m または2Km シングルモード20km |
1000BASE-SX | 最長距離:マルチモード550m | |
1000BASE-LX | 最長距離:マルチモード・シングルモード゙5Km |
[Table09-02:IEEEによるケーブルの規格]
まず、頭の10〜1000の数字は、データ転送量を示す。単位はM(メガ)bpsだ。
10なら10Mbpsってことだ。
1秒間に運べるビット数でしたよね、bpsって。
うむ。
次の「BASE」は、データ伝送方式だ。ベースバンド伝送、信号を直接多重化しないで送る方式ということだ。
多重化しない?
ディジタル信号のように、信号の強弱で送る方式だということで、この場合複数の信号を同時に銅線上に流せない。
これだと装置が簡単ですむのでLANでは主流な方式だ。
ふむふむ。
逆に、同軸ケーブルのように1本しか銅線がない場合、同時に流せる信号は1つだけになってしまうがな。
ツイストペアなら、1組づつで4つの信号を同時に流せる。
ははぁ、了解です。
つまり、10BASE-Tなら、転送量10Mbps、伝送方式:ベースバンド伝送、って意味ですね。
最後の、2、とか、TとかTXってのは?
うむ、ちょっとややこしいのだが。同軸の、つまり10BASE5と10BASE2の場合、最長距離という意味になる。単位は100mだ。
さらにややこしいのだが、10BASE2は最長距離200mでなく、実は185mなのだ。
そりゃまたややこしいですね。10BASE5は、最長500m。10BASE2は最長185mって意味ですね。
ではUTPや光ファイバの場合は?
これはケーブルのタイプだ。
Tがつけば、ツイストペア。他のは光ファイバになる。
ははぁ。数字の場合は最長距離。アルファベットの場合はケーブルのタイプってことですね。
うむ。そう思ってもらって間違いない。
もう一つのEIA/TIAは、UTPをカテゴリというものにわけている。
カテゴリ | 特徴 |
---|---|
1 | 電話線用。LANでは使われない。 |
2 | |
3 | 10Mbps |
4 | 16Mbps |
5 | 100Mbps |
[Table09-03:UTPケーブルのカテゴリ]
このように転送速度でカテゴリを分けている。
つまり、10BASE-Tではカテゴリ3。100BASE-TXではカテゴリ5を使用していることになる。
ふむふむ。
一気にメディアの事を説明してしまったな。
各ケーブルの名前と特徴。それと規格名は覚えておくように。
了解です。
さて、次回はレイヤ1での機器について説明するぞ。
はい。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- 3種類
- 最近よく使われるもう1つのメディア、無線については省かせていただきます。
- IEEE
-
[Institute of Electrical and Electronics Engineers ]
電気電子学会。
通信とネットワークに関する標準化団体。
- EIA/TIA
-
米国電子工業会[Electronic Industries Association]と、通信工業会 [Telecommunications Industry Association]のこと。
共同で規格を発表することが多いのでEIA/TIAと表記される。
- UL
-
[Underwriters Laboratories]
損害保険者研究会。
- 堅い
- 堅い事が何故LANケーブルの欠点になるかというと、敷設の際に好きな場所へケーブルを這わせる事ができなくなるため。
- UTP
- [Unshielded Twisted-Pair cable]
- STP
-
[Shielded Twisted-Pair cable]
正直に申し上げて、このケーブル見たことないです。
ちなみにスイッチにでてくるスパニングツリープロトコルもSTPと省略されるため注意が必要。
- シングルモードと…
- シングルモードの方がより広い帯域幅を持ちます。
- コネクタ
-
機器と接続するため、ケーブルの端につける器具のこと。
RJコネクタは、電話機にも使用されているため、電話機とケーブルを繋いでいるところで見ることができる。
- ベースバンド伝送
-
[baseband]
反対語はブロードバンド伝送。ブロードバンド伝送は多重化が可能で、主にアナログになる。
このブロードバンド伝送の「ブロードバンド」は広帯域回線という意味のブロードバンドとは似てるようで違うので注意。
- カテゴリ
-
[category]
LANケーブルに、「CAT・5」などと書かれていることが多い。
現在では1000M(1G)bpsまでの規格としてカテゴリ6やエンハンスド[enhanced]カテゴリ5(CAT.5e)などがある。
- ネット君の今日のポイント
-
- ネットワーキングメディアには、同軸、UTP、光ファイバの3種類がある。
- それぞれの違いと特徴を覚えておこう。
- 実際にLANで多く使われているのは、UTPと光ファイバ。