■ 信号
まず、ITだネットワークだと騒がれていても、根底にあるのは電気信号だということを思い出すのだ。
はぁ。
なんだその気のない返事は。
やる気がないのなら帰ってもらおう。
あ、いや、そうでなくて。
いきなりそんなこと言われてもって感じです。
そうか。話を聞く意思があるなら、話を続ける。
いままでデータ、データと言ってきたが、実際メディアを通るときはなんらかの信号の形で相手に伝えるわけだ。
なんらかの、ってことは電気信号以外にもあるんですか?
うむ。もっとも一般的に使われるのは銅線を使ったメディアを流れる電気信号だ。
だが、他にも光ファイバケーブルの場合は光信号であるし、無線LANの場合は電波になる。
なるほど。
すべてについて言及するのも手間なので、もっとも一般的で実際使われている銅線での、電気信号を中心に説明する。
まず、信号といっても2種類存在する。アナログとディジタルだ。
アナログとディジタル…。
時計みたいですね。
ふむ。そうくるとは思わなかったな。
連続的と非連続的という違いなのだが。
[Figure08-01:アナログとディジタル]
アナログ信号とディジタル信号の簡略な図だ。
アナログ信号は波。ディジタルはON/OFFと考えるのが一番わかりやすいかもしれん。
波と、ON/OFFですか。
そうだ。従来の信号はアナログが多かった。
なんといっても波は普通に存在してるから、それを模倣する方が簡単だからな。
なるほど。音は音波とかいいますしね。
特に音波は、そのまま電話で使う形にしやすいしな。実際は多重化やらなんやらするせいで違う形になるが。
一方、ディジタルはなにかの技術によって作られた信号だ。
最近は頭にディジタルとつくのが多いですね。ディジタル録音とかなんとか。
うむ、CD-DAの録音もディジタル信号を使っているな。コンピュータ内部でやりとりされる信号もディジタル信号だ。
通信の場合は、ディジタル信号か、アナログ信号か、どちらかを使う。
でも、コンピュータがディジタル信号を使っているのなら、通信もディジタル信号じゃないんですか?
■ 回線
確かにそう考えるのが普通だが。どちらを使うかは、通信回線に依存する。
回線がアナログしか使えなければ、アナログを使うしかない。
アナログしか使えない回線ってあるんですか?
何を言っている。一般電話回線がそうだ。
あぁ、そうか。そういえばそうですね。
なので一般電話回線を使用して通信する場合は、モデム(MODEM)が必要になる。
モデムはコンピュータのディジタル信号を、電話用のアナログ信号に変換してくれる装置だ。
一方ディジタル回線といえば、一番有名なのはISDNだな。
ISDNと言えば。
友人がISDNにするとかいって、「てぃえー」とかいう装置がどうこうと相談されましたが、それはどんな装置なんです?
TAか?ISDNは普通の電話回線と違い特殊なので、ちょっと特別な接続装置が必要なのだ。それがTAだ。
ただし、TAだけではダメで、DSUという装置も必要だ。
でぃーえすゆーですか?
なんか色々必要なんですね。
DSUに関しては、DSU内蔵TAがわりと一般的なのでそれほど悩まなくてよい。買うときにDSUというものが内蔵されているかどうかは確かめねばならんがな。
はぁ、友人にはそういっておきます。
ネット君に相談をもちかけるとは、よほど切羽詰っていたんだな。可哀想に。
他にもディジタル回線としては、もちろんLANケーブルが上げられる。そうだな、接続方式についても話しておいた方がいいな。下図をみてくれ。
[Figure08-02:接続方式]
あれ?
ケーブルモデムとADSLモデムってのは話にでてきませんでしたけど、なんです? スプリッタってのもありますけど?
いっぺんに言われてもな。
まずケーブルモデムからだ。ケーブルモデムは、CATVで使用されているケーブルとの接続に使用されるモデムだ。
ケーブルTVで使われているケーブルを使ったインターネット接続サービスに使うんですよね。
モデムってことはアナログなんですか?
いや、必ずしもそういうわけではない。
一般電話回線でのモデムの役割をする装置なので、そういう名前がついていると思われる。これはADSLモデムも同じだ。
はぁ。どうせなら別の名前をつけてくれればいいのに。
まあそういうな。
ADSLモデムとケーブルモデムの特徴は、普通のモデムと違いパソコンとLANケーブルで接続される所だな。
へぇ、じゃあ普通のモデムは何で接続されるんです?
EIA/TIA-232という規格で作られたケーブルで接続する。
これは非常に普及している規格なので、普通のパソコンならシリアルポートという名前で接続口がある。TAもこれで接続することが普通だ。
ふむふむ。で、スプリッタというのは?
ADSLは普通の電話で使う音声信号と、通信用のデータ信号の2つの信号が同じ回線に流れている。
それを、音声信号は電話機に、データ信号はADSLモデムにと振り分ける装置だ。
なるほど。インターネットに接続するにしても、どの回線を使うかで使う装置が違うんですね。
うむ。これらの回線と接続装置の関係は割と重要なので覚えておくように。
で。信号に話を戻す。
はい。
■ 信号に起きる障害
ディジタル信号にしろ、アナログ信号にしろ、電気信号というものは色々なことが起こる。
通信で特に問題になるのは、減衰、ノイズ、衝突というものが起こることだ。
減って、障害がおきて、ぶつかる…。
まず減衰だ。
ケーブルに使われる銅線には抵抗というものが存在する。これは絶対に避けられない。その抵抗のせいで信号が弱まってしまうことが減衰だ。
常温超伝導でも実用化されない限り確かに抵抗は発生しますね。
ん?でも光ファイバは?
確かに光ファイバは、電気抵抗などとは無縁の代物だ。光信号だからな。
だが、長時間ながれていると光信号が拡散してしまうのだ。光信号での減衰は、この拡散をあらわす。
ははぁ、光でもだめなんですか。
電気抵抗よりはマシだがな。
次はノイズだ。これはいくつかの原因によって電気信号の形が崩れてしまうことを指す。崩れてしまうと元の形がわからなくなってしまい、正確に伝わらなくなる。
いくつかの原因って、いくつもあるんですか?
うむ。以下のような原因がある。
- すぐ隣の銅線に信号が流れている(クロストーク)
- 熱雑音
- AC電源がそばにある
- 雷や無線、蛍光灯などがそばにある(EMI/RFI)
はぁ、なんか色々そばにあってはダメなんですねぇ。
そうだな。電気というものは影響を受けやすいものなのだよ。
なので信号が流れるケーブルの方で対策してることが多い。これはケーブルのところで説明する。
は〜。
で、最後の衝突ってのは?信号がぶつかる?
その衝突だ。このケーブル上を2つのデータが同時に流れた場合発生する。
信号がぶつかると、電圧が変になってしまい元の信号と違った形になってしまう。
まさしく激突ってわけですね。
うむ。ネットワーク用語では英語でコリジョンということが多い。覚えておくように。
いえっさー。
…。
しまった…。
どうしたんです、博士?
今回はギャグが少なかった!
…。はい?
ギャグが少なかった。
…、別にいいじゃないですか。真面目でも。
莫迦野郎!
ウィットとエスプリの効いた、小粋なギャグを見せつけることによって、大人の渋みと知性ってものをなぁ…。
…。
(僕をイジメるのがウィットとエスプリなんだろうか…)
まあいい。
次回こそ、私の魅力を炸裂させてやるさ。
…。はい、ではまた次回。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- 銅線
-
光ファイバの普及に伴い、従来型のケーブルはこう呼ばれるようになった。
メタルと呼ばれることも。
- 多重化
-
1つのメディアに複数の信号を流す仕組み。
実際は同時に2つの信号は流れないので、信号を重ね合わせる技術を指す。
- CD-DA
-
[CD Digital Audio]
いわゆる普通の音楽用CDのこと。
- モデム(MODEM)
-
[Modulator Demodulator]
変調復調装置。ディジタルからアナログへの変換が変調といい、逆が復調という。
- TA
-
[Terminal Adapter]
ターミナルアダプタ。詳しいことはISDNの説明の際に。
- DSU
-
[Digital Service Unit]
ディジタル回線終端装置の意味。回線用ディジタル信号とコンピュータなどの端末用ディジタル信号は異なるため、それを合わせる装置。
- EIA/TIA-232
-
かつてはRS-232Cと呼ばれたケーブル。
パソコンと周辺機器との接続に使用される。
- 振り分ける
-
英語で言うと、[split]。
なので振り分ける装置のことをスプリッタ[splitter]という。
- クロストーク
-
[cross talk]
漏話と訳される。隣の銅線の信号が影響すること。
- EMI/RFI
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[Electromagnetic interference]
[Radio frequency interference ]
電磁干渉(EMI)と無線周波干渉(RFI)のこと。
- コリジョン
-
[collision]
そのまま衝突の意。
- ネット君の今日のポイント
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- 通信に使用される信号は、アナログ信号とディジタル信号がある。
- 回線とそれに接続する装置の種類を覚えておこう。
- 信号の問題点として、減衰、ノイズ、衝突が発生してしまう。