■ ネットワーク・モデルが必要なわけ
さて、前回プロトコルというものを説明したな。
通信で使われるルールでしたっけ。
そうだ。
同じルールを使っているデバイス同士は通信できる。インターネットだと、TCP/IPというプロトコルを使って、世界中を接続できるようにしているわけだ。
会話をする時に、同じ言語を使って喋るようなものですよね。
うむ。ちゃんと前回の事を覚えているようだな。
通信には、プロトコルの他にも使用する機器についてや、ケーブルを流れる信号について、データの表現方法についてなど様々な規格が存在する。
へ〜。
統一した規格が必要な理由はわかるな?
規格に合わせて作れば、相互に通信が行えるからですね。
そうしないと、ネットワークの利点である「リソースの共有」が行えない、と。ウラー!
ロ…ロシア人?
ハラショー!
いや、それはもういいから。
昔から統一した規格があってそれに皆が従っていたわけではない。メーカで独自の規格を作り出し、異なるメーカの製品間では通信できないことが多かった。
へぇ。なんか不思議な感じですね。例えばNECと富士通のパソコン同士が通信できないなんて。
同じパソコンなのに。
うむ。だが、企業の業務が拡大するにつれ、この制約があまりにも大きくなってきたのだ。
「なんてことだ、我が社と銀行で相互通信ができないなんて!スピード第一の商売で負けてしまう!! それに不便すぎるっ!!」
なるほど。
それこそ、商売敵が通信できたら致命的ですね。
だろう。なので、統一した規格が必要だ、ということになったのだ。
そこで考え出されたのが、ネットワーク・モデルだ。
ねっとわーく・もでる?
そう、モデルだ。
各ベンダは、他ベンダと相互通信可能にするためにこのモデルに従う。だが、モデルはモデルでしかない。
?
つまり。例えば、画家が何人か集まって、お姉ちゃんの絵を描いたとする。この場合、お姉ちゃんのことを「モデル」というよな。
さて、この画家たちは全く同じ絵を描くだろうか?
同じ絵ってわけじゃないでしょうね。
人それぞれの画風ってのがあるでしょうし。
そうだな。同じものを見て、同じものを表現したはずなのに違う。画家の特色がでるわけだ。
では、その画家の色が出た絵は、それぞれ違うモデルを描いたように見えてしまうのだろうか?
いや、そんなことはないと思いますよ。
同じモデルを描いているんだし。
うむ、そうだろう。で、これをネットワーク・モデルに当てはめてみると。
ベンダ達は、「相互通信可能なネットワーク」という「モデル」を題材に、「製品」という「絵」を描く、というわけだ。
つまり、ベンダが作った製品は違うように見えても、実は似ている?
というよりも、異なるベンダとの相互通信を行うための、最低限の部分は同じにしてある、と言うべきかな。
これが、ネットワーク・モデルの考え方だ。
なるほど。で、誰が作ったんです?
ISOだ。▼ link
いそ?
もしくは、アイソと読む。単にアイ・エス・オーでもいいが。
ここが作ったモデルを、OSI参照モデルという。
■ OSI参照モデル
おーえすあい参照もでる?
ISOが作ったOSI…、間違えそうだ。
間違えるな。
これはすごく重要な事だからな。間違えたら殺す。
殺すって…
(ヤバい、目がマジだ…)
実際は、他にもモデルはいくつか存在するが、このOSI参照モデルが現在の主流だ。
ほとんどのベンダがこのモデルを使用している。
なるほど、それは重要そうですね。
このモデルをろくに説明できん奴が、ネットワークがどうだとか、インターネットが、とか。回線状況がどうで、Linuxでサーバをたてたからどうとか…。
一度死ね!! いや、俺が
あ、あの。博士…?
…、ああ、すまん。何かが乗り移っていたみたいだ。
それはそれとして、このOSI参照モデルには特徴がある。
(なんだったんだろう?)
どんな特徴ですか?
■ OSI参照モデル・例え話
うむ。簡単な例でいえば、そうだな手紙にしよう。相手に手紙で意思を伝えたいと思った。
それにはいくつかの手順が必要だな?
手紙を書いて、ポストに出す?
それだけか?
まず、内容を考える。何語で書くか決める。
そんな所まで?
そうだ。
内容を書く、封筒に入れる、宛名を書く、切手を貼る、ポストに出す。
すると次は。
郵便局員がポストから回収する、郵便局へ運ぶ、仕分けする、相手側の郵便局まで運ぶ…。
いいぞ、ネット君。その通りだ。このように通信には段階がある。
大雑把にわけると、「内容」「表現」「伝送物」「伝送」となるかな。
内容を決めるが「内容」。
何語で書く、内容を書くが「表現」ですか?
そうなるな。「伝送物」は便箋・封筒になるな。「伝送方法」はポスト・郵便局員・郵便トラックになる。
そして、これらにはそれぞれ別のルールが必要だよな?
そうなりますね。
手紙の書き方と、配達の仕方が同じルールなわけないですもんね。
そうだ。段階に応じて、それぞれルールが必要になる。
つまり図にするとこんな感じだ。そして、この段階は上から順に行われる。
段階 | 行うこと・するもの | ルール |
---|---|---|
内容 | 伝えたい事を考える | 明瞭に・簡潔に。 |
表現 | 手紙に書く | 相手がわかる言葉で。文語文にする。 |
伝送物 | 便箋・封筒・宛名 | 定型の便箋・封筒。切手や宛名の書き方 |
伝送 | 郵便局員・郵便トラック | 宛先までの道を決定する |
[Table04-01:通信の段階]
ははぁ。確かに段階に応じて、それぞれの役割にあったルールがありますよね。
■ OSI参照モデル・7つの層
実際のOSI参照モデルでは、以下の7段階で、それぞれ名前がついている。
第7層 | アプリケーション層 | Application Layer |
第6層 | プレゼンテーション層 | Presentation Layer |
第5層 | セション層 | Session Layer |
第4層 | トランスポート層 | Transport Layer |
第3層 | ネットワーク層 | Network Layer |
第2層 | データリンク層 | Data-Link Layer |
第1層 | 物理層 | Physical Layer |
[Table04-02:OSI参照モデル7階層]
それぞれの段階を層(レイヤ)と呼ぶ。
さきほどの手紙の例と同じように、それぞれの層でルールがあり、上から順番に下っていって、通信の手順を整えていく形になる。
は〜。
7つもあるんですかぁ。
そうだ。
この名前と順番は死んでも覚えろ。
やだなぁ、死んだら覚えられませんよ。
そうか?
そりゃそうですよ。
試してみたか?
試してみたかって、何を言って…。
(ニヤリ)
さささ、3分間ネットワーキングでした〜!!
- ベンダ
-
[vendor]
ハードウェア・ソフトウェアの製品の販売に対して、製品に責任を持つメーカもしくは販売会社。製造メーカの意でとられることが多い。
- ISO
-
[International Organization for Standardization]
国際標準化機関。
工業分野での標準化と規格統一を目指す国際機関。
ネットワークやコンピュータだけの標準化機関でなく、品質管理規格のISO9000シリーズや、環境保全管理のISO14000シリーズが有名。
何故「IOS」ではないかといえば、「ISO」が英語の略称ではないため(らしい)。
- OSI参照モデル
-
[Open Systems Interconnection Reference Model]
開放型システム間相互接続参照モデル。
1984年リリース。
- 何かが
-
…。
いや、僕は…違うですよ?
- 層(レイヤ)
-
[layer]
層・階層の意。
- ネット君の今日のポイント
-
- 異なるベンダ間で相互通信するために「ネットワーク・モデル」という統一規格がある。
- 現在つかわれているのは「OSI参照モデル」。
- OSI参照モデルの7階層の名前と順番は重要なので覚えよう。