3 Minutes Networking
Extra No.1

3Minutes NetWorking

地獄極楽編

特別第1回ネットワークインタフェース層 RFC1149

■ IETFとRFC

インター博士

さてネット君。
インターネットの標準を決めている団体を知っているかね。

ネット助手

ISOじゃないんですか? もしくは、IEEEとか。

インター博士

違う。
IETFだ。▼ link

ネット助手

じ・いんたーねっと・えんじにありんぐ・たすくふぉーす。
インターネット技術任務部隊?

インター博士

おいおい、アメリカの空母機動部隊じゃないんだから。
インターネット技術特別調査委員会だ。そのIETFが発行する文書をRFCという。▼ link

ネット助手

あーるえふしー。

インター博士

うむ。
今回はそのRFCで規定されている、IPデータグラムの伝送方式について説明する。

ネット助手

IPデータグラムの伝送?
イーサネットや、PPPや、SLIPのカプセル化の話ですか?

インター博士

イーサネットやPPPなどは、本編「3分間」で話すからいいとして。
今回は、RFC1149で規定されている伝送方式だ。

ネット助手

RFC1149?

インター博士

[A Standard for the Transmission of IP Datagrams on Avian Carriers]
鳥類キャリアによるIPデータグラムの伝送」、だ。

ネット助手

ははぁ、そりゃまた聞き覚えのない伝送方式ですねぇ。

■ 鳥類キャリアの特徴

インター博士

レイヤ3のIPデータグラム、つまりパケットを鳥類キャリアによってカプセル化し、伝送する。

ネット助手

ふむふむ。

インター博士

まず、鳥類キャリア伝送の特徴として。
1つのキャリアにつきポイントツーポイント接続のみである、という点が上げられる。

ネット助手

マルチポイント接続ではないんですね。

インター博士

うむ。
1つのキャリアにつき、1対1の送受信しか行えないポイントツーポイント接続だ。
それにだ、キャリア同士の干渉が少ない

ネット助手

キャリア同士の干渉っていうと。例えばクロストークとかですか?

インター博士

すぐ隣をキャリアが流れることによって起きる干渉がクロストークだったな。
鳥類キャリアはそのような、キャリア同士の干渉はあまり起きないのだよ。何故ならば、3次元のエーテル空間を利用できるのでな。

ネット助手

3次元のエーテル空間?

インター博士

イーサネットの「イーサ」はなんだった?

ネット助手

イーサネットのイーサ?
…、ether、エーテルでしたっけ。あぁ、それでエーテル空間っていうんですか。

インター博士

うむ。
イーサネットの1次元のエーテル空間にくらべ、鳥類キャリアは3次元のエーテル空間を使える。なので、キャリア同士が隣接することが少なく、干渉が起こりにくい。

ネット助手

ははぁ、なるほど。

インター博士

干渉の少なさに加え、鳥類キャリア自体が衝突回避機能を持っている。

ネット助手

自動衝突回避機能!!
すごいじゃないですか。

インター博士

うむ。
衝突という危険を回避する機能が搭載されているキャリアなのだ。

ネット助手

干渉がおきにくい上に、衝突を回避するなんて。
なかなか便利ですねぇ。

■ 鳥類キャリアのフレーム形式

インター博士

鳥類キャリアを使う場合、以下のようなフレーム形式になる。

フレーム形式

[FigureEX01-01:フレーム形式]

インター博士

レイヤ3、インターネット層から渡されたパケットを、16進数でそのまま小さな紙片に印字する。1オクテット毎に区分けするのが望ましい。

ネット助手

16進数表記するんですね。
で、小さな紙片に印字?

インター博士

うむ。
それをキャリアに巻きつける

カプセル化

[FigureEX01-02:カプセル化]

インター博士

かつ、信頼性の保証のため、テープで端を止める
これが、RFC1149によるカプセル化だ

ネット助手

テープで端を止めて、固定するわけですね。
ずり落ちたり、はがれたりしないように。

インター博士

この鳥類キャリアを使った場合の、帯域幅は、キャリアの肢の長さに依存している。

ネット助手

依存している、って。
だいたいどのぐらいなんです?

インター博士

MTUで言えば、平均256ミリグラムくらいかな。

ネット助手

256ミリグラム。

インター博士

鳥類キャリアによって届けられたフレームは、テープをはがし、光学的に読み取って、電子転送が可能な形にする。

ネット助手

光学的に読み取り、って。
OCRとかですか?

インター博士

もしくは、肉眼で読み取って、手動で入力するか、どちらかだな。

ネット助手

ははぁ。

■ 鳥類キャリアによるデータグラム伝送

インター博士

鳥類キャリアによるデータグラム伝送は、他にもいくつか特筆すべき特徴を持っている。

ネット助手

干渉がおきにくい上に、衝突を回避するという特徴以外にまだあるんですか?

インター博士

うむ。
まずワームの除去機能だな。
これが既に組み込まれている。

ネット助手

へへぇ。
データグラム自体がワームの除去機能を持ってるんですか?伝送の際にワームが取り除かれるなんて、すごいですね。

インター博士

そうだろう。
アンチウィルスソフトでも、伝送中にワームの除去を行うわけではないからな。

ネット助手

ですよねぇ。
すごいや。

インター博士

ところでだ。
IPによる伝送は、ベストエフォート型伝送だったな。

ネット助手

「努力はするけど保障はしない」ですよね。

インター博士

うむ。
鳥類キャリアでIPデータグラムを伝送した場合、鳥類キャリアは自己再生成能力を持っているので、より信頼性の高い伝送を行うことが可能だ。

ネット助手

自己再生成って。
それってとんでもないことじゃないですか。

インター博士

ただし、その自己再生成は無限でもないし、時間もかかる、という点を忘れてはならない。
完璧ではない、ということだな。

ネット助手

そうですよね。
無限に自己再生成するような事って、どんなものでもありえないですよね。

インター博士

ベストエフォート型だが、万が一届かなかった場合でも、鳥類キャリアが落ちるまでは、再配送を行うことが可能だ。

ネット助手

再配送?

インター博士

うむ。
疲れるまでは、何度でも送り出すことが可能だ。

ネット助手

ははぁ。

インター博士

さらに。
鳥類キャリアは、イーサネットなどと違い、ブロードキャストは規定されていない

ネット助手

全員宛はないんですか?

インター博士

うむ、ない。
ただし、イーサネットなどと同様にストームの影響を受ける事はある。

ネット助手

ブロードキャストはないのに、ストームはあるなんて変な感じですね。

インター博士

まぁ、そうだな。
鳥類キャリアの場合、ストームが発生する時はキャリアが退避してしまい、転送が遅れることが多いらしい。

ネット助手

退避、ですか。
なくなるわけではないんですね?

インター博士

場合によっては、キャリアが無理をすることによりストームの中を伝送しようとして失われる場合もある。

ネット助手

なるほど。

インター博士

あと、特筆しておくべきこととしては、キャリアの後が追跡可能ということだな。

ネット助手

キャリアの後を追跡…。
何か手がかりがキャリアが通った後に残っているとか?

インター博士

うむ。自動的に作られる
こう、ポトポト落とすらしい。

ネット助手

ははぁ。

インター博士

ちなみに、この鳥類キャリアを使ったQoSも規定されている。
RFC2549だな。

ネット助手

品質保証ですか。
ますます高性能なデータグラム転送方法ですね。

インター博士

うむ。
今回はここまでだな。

ネット助手

了解。
3分間ネットワーキング・特別編でした〜♪

IETF
[The Internet Engineering Task Force]
RFC
[Request For Comments]
「新しい規約を考えました。なんかコメントください」という文書であったが、今は非常に影響力が大きくなっている。
RFC1149
1990年、4月1日発表。
干渉が少ない
早春期を除く。
MTU
[Maximum Transmission Unit]
最大伝送ユニット。ネットワークに送信できる最大パケットサイズ。
イーサネットでは、平均1500バイト
OCR
[Optical Character Reader]
光学式文字読取装置。
手書きや印字された文字を読み取り、データ化する装置。
ワーム
[worm]
自己増殖をしながら、破壊活動をするプログラム。
ウィルスと混同しがちだが、自らをネットワークなどにより複写する機能を有する。
有名なものは「I Love You」や「Code Red」。
直訳すると
ストーム
[strom]
ネットワーク用語では、ブロードキャストストームの事。
誤ったブロードキャストが、誤った応答を呼び、さらにブロードキャストが繰り返されることにより、帯域幅をほとんど使い切ってしまって転送が不可能になる。
直訳すると
QoS
[Quality of Service]
品質保証。
特定のアプリケーションなどで、品質にばらつきが出るのを防ぐために、アプリケーションに一定の帯域幅を占有させる。VoIPなどで使われる。
RFC2549
[IP over Avian Carriers with Quality of Service]
1999年、4月1日発表。
ネット助手ネット君の今日のポイント
  • インターネット技術はIETFが規定して、RFCという文書を出す。
  • これらは日本人には真似できないことであるが、ジョークというものを理解した人々が書くこともあるらしい。
  • なお、驚くべきことに、本当にやってしまった強者もいる。
  • なお、本物のRFC文書はJPNICでも検索できます。

3 Minutes NetWorking Extra No.1

管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp