■ IETFとRFC
さてネット君。
インターネットの標準を決めている団体を知っているかね。
ISOじゃないんですか? もしくは、IEEEとか。
違う。
IETFだ。▼ link
じ・いんたーねっと・えんじにありんぐ・たすくふぉーす。
インターネット技術任務部隊?
おいおい、アメリカの空母機動部隊じゃないんだから。
インターネット技術特別調査委員会だ。そのIETFが発行する文書をRFCという。▼ link
あーるえふしー。
うむ。
今回はそのRFCで規定されている、IPデータグラムの伝送方式について説明する。
IPデータグラムの伝送?
イーサネットや、PPPや、SLIPのカプセル化の話ですか?
イーサネットやPPPなどは、本編「3分間」で話すからいいとして。
今回は、RFC1149で規定されている伝送方式だ。
RFC1149?
[A Standard for the Transmission of IP Datagrams on Avian Carriers]
「鳥類キャリアによるIPデータグラムの伝送」、だ。
ははぁ、そりゃまた聞き覚えのない伝送方式ですねぇ。
■ 鳥類キャリアの特徴
レイヤ3のIPデータグラム、つまりパケットを鳥類キャリアによってカプセル化し、伝送する。
ふむふむ。
まず、鳥類キャリア伝送の特徴として。
1つのキャリアにつきポイントツーポイント接続のみである、という点が上げられる。
マルチポイント接続ではないんですね。
うむ。
1つのキャリアにつき、1対1の送受信しか行えないポイントツーポイント接続だ。
それにだ、キャリア同士の干渉が少ない。
キャリア同士の干渉っていうと。例えばクロストークとかですか?
すぐ隣をキャリアが流れることによって起きる干渉がクロストークだったな。
鳥類キャリアはそのような、キャリア同士の干渉はあまり起きないのだよ。何故ならば、3次元のエーテル空間を利用できるのでな。
3次元のエーテル空間?
イーサネットの「イーサ」はなんだった?
イーサネットのイーサ?
…、ether、エーテルでしたっけ。あぁ、それでエーテル空間っていうんですか。
うむ。
イーサネットの1次元のエーテル空間にくらべ、鳥類キャリアは3次元のエーテル空間を使える。なので、キャリア同士が隣接することが少なく、干渉が起こりにくい。
ははぁ、なるほど。
干渉の少なさに加え、鳥類キャリア自体が衝突回避機能を持っている。
自動衝突回避機能!!
すごいじゃないですか。
うむ。
衝突という危険を回避する機能が搭載されているキャリアなのだ。
干渉がおきにくい上に、衝突を回避するなんて。
なかなか便利ですねぇ。
■ 鳥類キャリアのフレーム形式
鳥類キャリアを使う場合、以下のようなフレーム形式になる。
[FigureEX01-01:フレーム形式]
レイヤ3、インターネット層から渡されたパケットを、16進数でそのまま小さな紙片に印字する。1オクテット毎に区分けするのが望ましい。
16進数表記するんですね。
で、小さな紙片に印字?
うむ。
それをキャリアに巻きつける。
[FigureEX01-02:カプセル化]
かつ、信頼性の保証のため、テープで端を止める。
これが、RFC1149によるカプセル化だ。
テープで端を止めて、固定するわけですね。
ずり落ちたり、はがれたりしないように。
この鳥類キャリアを使った場合の、帯域幅は、キャリアの肢の長さに依存している。
依存している、って。
だいたいどのぐらいなんです?
MTUで言えば、平均256ミリグラムくらいかな。
256ミリグラム。
鳥類キャリアによって届けられたフレームは、テープをはがし、光学的に読み取って、電子転送が可能な形にする。
光学的に読み取り、って。
OCRとかですか?
もしくは、肉眼で読み取って、手動で入力するか、どちらかだな。
ははぁ。
■ 鳥類キャリアによるデータグラム伝送
鳥類キャリアによるデータグラム伝送は、他にもいくつか特筆すべき特徴を持っている。
干渉がおきにくい上に、衝突を回避するという特徴以外にまだあるんですか?
うむ。
まずワームの除去機能だな。
これが既に組み込まれている。
へへぇ。
データグラム自体がワームの除去機能を持ってるんですか?伝送の際にワームが取り除かれるなんて、すごいですね。
そうだろう。
アンチウィルスソフトでも、伝送中にワームの除去を行うわけではないからな。
ですよねぇ。
すごいや。
ところでだ。
IPによる伝送は、ベストエフォート型伝送だったな。
「努力はするけど保障はしない」ですよね。
うむ。
鳥類キャリアでIPデータグラムを伝送した場合、鳥類キャリアは自己再生成能力を持っているので、より信頼性の高い伝送を行うことが可能だ。
自己再生成って。
それってとんでもないことじゃないですか。
ただし、その自己再生成は無限でもないし、時間もかかる、という点を忘れてはならない。
完璧ではない、ということだな。
そうですよね。
無限に自己再生成するような事って、どんなものでもありえないですよね。
ベストエフォート型だが、万が一届かなかった場合でも、鳥類キャリアが落ちるまでは、再配送を行うことが可能だ。
再配送?
うむ。
疲れるまでは、何度でも送り出すことが可能だ。
ははぁ。
さらに。
鳥類キャリアは、イーサネットなどと違い、ブロードキャストは規定されていない。
全員宛はないんですか?
うむ、ない。
ただし、イーサネットなどと同様にストームの影響を受ける事はある。
ブロードキャストはないのに、ストームはあるなんて変な感じですね。
まぁ、そうだな。
鳥類キャリアの場合、ストームが発生する時はキャリアが退避してしまい、転送が遅れることが多いらしい。
退避、ですか。
なくなるわけではないんですね?
場合によっては、キャリアが無理をすることによりストームの中を伝送しようとして失われる場合もある。
なるほど。
あと、特筆しておくべきこととしては、キャリアの後が追跡可能ということだな。
キャリアの後を追跡…。
何か手がかりがキャリアが通った後に残っているとか?
うむ。自動的に作られる。
こう、ポトポト落とすらしい。
ははぁ。
ちなみに、この鳥類キャリアを使ったQoSも規定されている。
RFC2549だな。
品質保証ですか。
ますます高性能なデータグラム転送方法ですね。
うむ。
今回はここまでだな。
了解。
3分間ネットワーキング・特別編でした〜♪
- IETF
-
[The Internet Engineering Task Force]
- RFC
-
[Request For Comments]
「新しい規約を考えました。なんかコメントください」という文書であったが、今は非常に影響力が大きくなっている。
- RFC1149
- 1990年、4月1日発表。
- 干渉が少ない
- 早春期を除く。
- MTU
-
[Maximum Transmission Unit]
最大伝送ユニット。ネットワークに送信できる最大パケットサイズ。
イーサネットでは、平均1500バイト。
- OCR
-
[Optical Character Reader]
光学式文字読取装置。
手書きや印字された文字を読み取り、データ化する装置。
- ワーム
-
[worm]
自己増殖をしながら、破壊活動をするプログラム。
ウィルスと混同しがちだが、自らをネットワークなどにより複写する機能を有する。
有名なものは「I Love You」や「Code Red」。
直訳すると虫。
- ストーム
-
[strom]
ネットワーク用語では、ブロードキャストストームの事。
誤ったブロードキャストが、誤った応答を呼び、さらにブロードキャストが繰り返されることにより、帯域幅をほとんど使い切ってしまって転送が不可能になる。
直訳すると嵐。
- QoS
-
[Quality of Service]
品質保証。
特定のアプリケーションなどで、品質にばらつきが出るのを防ぐために、アプリケーションに一定の帯域幅を占有させる。VoIPなどで使われる。
- RFC2549
-
[IP over Avian Carriers with Quality of Service]
1999年、4月1日発表。