■ レイヤ2の内容
さてさて。今回からはレイヤ2の話をする。
はい。
レイヤ2はどんな機能だったかね、ネット君?
え〜っと、近くの機器とのデータの伝送制御でしたっけ?
うむ。その通りだ。
いいぞ、最近のネット君はよく覚えているようだな。培養のおかげだな。
ううぅ。やっぱりブロイラー扱いなんですね、僕は。
まだレイヤ1が終わっただけだ。先は長いぞ、ネット君。
レイヤ2はデータの伝送制御を行う。具体的に言うと、フレームの伝送制御だな。
え〜っと。フレームって、なんでしたっけ?
前言撤回だ。まったく。
カプセル化して、レイヤ2の制御情報を付け加えたデータの事だ。思い出したか?
あぁ、そうそう。そうですよ。
宅急便みたいに、データを梱包していくんでしたっけ。
うむ。
レイヤ1は、実際の電気信号、メディアの仕様、ビットの表記など行うわけだが、これだけではどうにもならんことがある。
例えばなんです?
例えば、電気信号・ビットだけでは、「誰に届ける」ということがわからない。アドレッシングというものが必要だ。
他にもレイヤ1は機器に依存しすぎていて、上のレイヤとの繋がりを作るのが難しい。
ははぁ。
そこで、レイヤ2だ。レイヤ2はレイヤ1の欠点を補い、上位レイヤとの繋がりをつくる。
これから説明するのは、LANでのレイヤ2だ。
WANのレイヤ2は?
うむ、WANでのレイヤ2は後々で説明する。
一度にやると、絶対に混乱するのでな。いわんやネット君をや。
反語でわざわざ強調してくれなくてもいいです。
■ LLC副層とMAC副層
今現在、LAN規格でもっとも有力な規格組織といえば、IEEEだ。
前にもでてきたな。
あい・とりぷるいー、って読むんでしたっけ。
ネットワーキング・メディアの所で出てきましたよね。10BASE-Tとか、10BASE-5とか。
そうだ。
IEEEはOSI参照モデルを以下のように解釈して、規格をつくりだしている。
OSI参照モデル | IEEE | |
---|---|---|
レイヤ2:データリンク層 | 論理リンク制御副層 | |
メディアアクセス制御副層 | ||
レイヤ1:物理層 | 物理層 |
[Table12-01:IEEEのレイヤ1・2]
え〜っと、レイヤ2が2つに分かれているように見えるんですけど?
そうだ。IEEEのLAN仕様は、レイヤ2をさらに2つに分けている。
論理リンク制御副層(LLC)とメディアアクセス制御副層(MAC)の2つだ。
いいんですか? OSI参照モデルを勝手にさらに分けちゃって?
忘れたのか?OSI参照モデルはあくまで「モデル」だ。
実際の仕様を導くガイドライン、大筋でOSIに反していなければいいのだよ。
はぁ。そういえば、モデルでしたよね。
LLC副層は、実際の機器に依存しない部分を取り決めている。
例えばエラー制御、上位サービスの指定などだな。
あれ?エラー制御って、レイヤ4の高信頼性云々って所でやるんじゃないんですか?
うむ、よく覚えていた。エラー制御は確かにレイヤ4の役割だ。
だがレイヤ2でも、ビットのチェックぐらいのエラーチェックを行うのだ。まあ、一番最低限のエラー制御だと覚えておけばよい。
ははぁ。
一方、MAC副層は、メディアへの接続を取り決める。
どのように、共有メディアでデータを送信するか、という点を決めているのだ。これにはメディア・アクセス制御などが使われる。
メディア・アクセス制御って?
メディア・アクセス制御とは、どのように共有メディアにアクセスするか、という事だ。
みなが使うメディアなので、誰が送信を行うかを制御する。
ははぁ。
つまりMAC副層で、どのように送るかを決定し、LLC副層で、どのように扱うかが決まるということだな。
レイヤ2を役割によってさらに上と下に分けている、と。
■ LANの仕様
さて、実際のLANの仕様は以下のように取り決められている。
レイヤ | LAN規格 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
レイヤ2 | LLC副層 | イーサネット | IEEE802.2 | |||
MAC副層 | IEEE 802.3 | IEEE 802.5 | FDDI | |||
レイヤ1 |
[Table12-02:LAN規格とレイヤ]
なんか、レイヤをまたがってるんですけど?
いいんですか、これ?
うむ。実際のLANの機器は、レイヤ1と2両方の機能を持ち合わせていることが多いのだ。
なので、規格の方もレイヤ1、2双方を含んでいる。
そんなもんなんですか?
そんなものだ。
さて、LANの仕様には、4つあることがわかってもらえたと思う。イーサネット、IEEE802.3、802.5、FDDIだ。
あれ? IEEE802.2は?
IEEE802.2は、802.3、802.5、FDDIの3つで使用されるLLC副層の規格だ。
イーサネットはこのIEEE802.2の部分も含んでいる。なので実際に物理的なLANとしてあらわれるのは、上記の4つだ。
そうか、LLC副層は機器に依存しないレイヤでしたっけ。
うむ。
これら4つは、使用するネットワーキングメディア、メディア・アクセス制御方式、物理トポロジなどが異なる。
ふむふむ。
イーサネットを除く3つは、LLC副層の部分は共通だが、MAC副層で決められているメディア・アクセス制御が異なる。
さらに、レイヤ1で決められているネットワーキング・メディアや物理トポロジも違うってことですね。
うむうむ。
さて、以下のように4つのLAN規格は異なる。
規格 | メディア | メディア・アクセス制御方式 | 物理トポロジ |
---|---|---|---|
イーサネット | 同軸・UTP・光ファイバ | CSMA/CD | バス・スター |
IEEE802.3 | 同軸・UTP・光ファイバ | CSMA/CD | バス・スター |
IEEE802.5 | 同軸・UTP | トークンパッシング | リング・スター |
FDDI | 光ファイバ | トークンパッシング | 二重リング |
[Table12-03:LAN規格]
メディア・アクセス制御方式については、先で説明する。
あの〜。
僕の見間違いでなければ、イーサネットとIEEE802.3は同じに見えるんですけど?
大丈夫だ、ネット君。今日の君の視覚におかしいところはない。
今日の、ってまるでいつもは視覚がおかしいみたいな言い方しないでくださいよ。
気がついてなかったのか? 憐れな。
ともかく、イーサネットとIEEE802.3はほぼ同一だ。上の表には出てきてない部分が異なるだけだ。
どんな所です?
IEEE802.3は、LLC副層でIEEE802.2が使用されるが、イーサネットはLLC副層の役割を担う部分を独自で持っている。その違いだ。
簡単にいうと、データにつける制御情報がちょっと異なるのだよ。
なるほど。
さらに、イーサネットとIEEE802.3は相互互換している。
なので、ほぼ同一と考えてもらってよい。
了解しました。
■ レイヤ2でのカプセル化
さて、カプセル化の話を思い出してもらおう。
レイヤ2は、レイヤ3から渡されたパケットをフレームにするんだったな。
パケットを包み込んでフレームにするんですよね。
うむ。
さてこのカプセル化と、LAN規格の話を組み合わせると、以下のようになる。
[Figure12-01:レイヤ2でのカプセル化]
ははぁ、副層ごとにも制御情報を付加していくんですね。
うむ。各仕様によって、MAC副層で付け加えられる制御情報が違うというのがポイントだ。
それにより、LLC副層より上のレイヤはメディアなど物理的な仕様を意識する必要がない。
なるほど。
さて、次回もレイヤ2の話だ。
レイヤ2でのアドレッシングの話をするぞ。
了解。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- アドレッシンング
-
[addressing]
デバイスを識別する識別子をつけること。
住所・名前をつけると考えるのが簡単。
- 論理リンク制御副層
-
[Logical Link Control Sub-Layer]
LLC副層と略される。
- メディアアクセス制御副層
-
[Media Access Control Sub-Layer]
MAC副層と略される。
- ビットのチェック
-
FCS[Frame Check Sequence]と呼ばれるチェックを行います。
よく使われるのは、パリティ、CRC、チェックサムなどです。
- イーサネット
- [Ethernet]
- FDDI
-
[Fiber Distributed Data Interface]
ファイバ分配データ・インターフェイスと訳される。
- イーサネットと…
-
TCP/IPではイーサネット。
その他のプロトコル(Netware、NetBIOSなど)はIEEE802.3が使用される事が多い。
- ネット君の今日のポイント
-
- レイヤ2は、LLC副層とMAC副層にわかれる。
- LLC副層は、機器に依存しない論理的な部分を決める。
- MAC副層は、ネットワーキング・メディアとの接続を決める。
- LAN規格として、LLC副層にはイーサネット、IEEE802.2が、MAC副層にはイーサネット、IEEE802.3、IEEE802.5、FDDIがある。