■ 論理アドレス
さて、前回まででレイヤ3は論理アドレスを決定するというのをわかってもらえたと思う。
はい、階層型アドレスでしたよね。
論理アドレスの代表格といえる、IPアドレスを説明する前に、いくつか論理アドレスの特徴を話しておこう。
まず、階層型だ、ということだ。
第19回で説明されてましたよね。
そうだ。物理アドレスは単なるユニークなビット列でしかない。
一方、論理アドレスはそのアドレス自体に意味がある。
「何処の、誰?」という情報でしたよね。
うむ。以下の図のように、その「何処の、誰」という情報は積み上げることができる。
なので、階層型とよばれている。
[Figure21-01:階層型アドレス]
例えば、図の1番のパソコンなら、「ネットワークA内ネットワークA1内ネットワークA1a内1番」っていうアドレスになるんですよね。
さすがに第19回、20回と続けてやっただけの甲斐はあったな。
ネット君ですらここまで覚えているとは。
強調しないでくださいよ。さすがに覚えます。
いや、珍しかったのでつい、な。
ともかく、さらに特徴として、論理アドレスはネットワーク管理者がつけるという点だ。
ネットワーク管理者がつける?
MACアドレスはIEEEがつけたベンダーコードと、ベンダーがつけた割り当てコードから成り立っていたよな。
使用する側は変更不可能だったわけだ。
そうでしたよね。
NICにつけられたアドレスだったわけですよね。
だが論理アドレスは、そのネットワークの管理者が必要に応じて自由につけることができる。
そして、論理アドレスはNICにではなく、各デバイスのネットワークとの接続点ごとにつける。
ネットワークとの接続点ごと?
それって、NICごとってことじゃないんですか? だって、パソコンのネットワークとの接続点ってNICでしょ?
いや、物理アドレスと違う点は、例えばNICが故障して違うNICに変えたとしても、同じ論理アドレスを持つのだよ。
なので、ネットワークとの接続点ごと、なのだ。
ははぁ。
パソコンごとにつける、ってことですか?
接続点ごとだ。
パソコンが1枚のNICだけだった場合は、1つの論理アドレス。そのパソコンが2枚のNICを持っていた場合、2つの論理アドレスを持つことになる。
あぁ、なるほど。
そして、論理アドレスは、「何処の、誰」だったよな。
なのでそのデバイスの所属するネットワークが変わった場合、論理アドレスも変わることになる。
へへぇ。MACアドレスはNICに付属してるから、何処へ行っても同じアドレスだったのに。
さらに、レイヤ3にはいくつかのプロトコルがあったのは前回話した。
なので、プロトコルごとに論理アドレスの体系が違う。代表的なものを下の表にあげておこう。
プロトコル | アドレスの例 |
IP (TCP/IP) | 192.168.100.125 |
IPX (IPX/SPX) | 4d.0060.3e86.e220 |
DDP (AppleTalk) | 151.10 |
[Table21-01:レイヤ3アドレスの例] ▼
あらら、ずいぶん違うんですね。
うむ。
プロトコルが違うと、アドレスも変わってしまうので、なんらかの変換作業が必要になる。
ははぁ。
■ 何処の、誰?
さて、どのプロトコルを使うにしろ、論理アドレスは所属するネットワークの番号+ホストの番号という形になっている。
「何処の」+「誰」ですか。
そうだ。
ネットワークの番号は接続されているすべてのネットワークでユニークでなければならない。
接続されているすべてのネットワークでユニーク。
接続されていない場合はいいってことですか?
相互に通信しあわない独立したネットワーク同士なら、かまわない。
通信する時に区別する必要がないからな。
[Figure21-02:接続されているネットワークでユニーク]
ははぁ。
一方、ホストの番号は所属するネットワーク内でユニークでなければならない。
こっちはわかります。
僕が住んでる場所は「新宿」なんですけど、東京都の「新宿」と同じ名前でも、ちゃんと県名から書けば区別がつきますからね。
そういうことだ。
違うネットワークに同じホスト番号を持つものがいても、ネットワーク番号が違うから、結果的にユニークになる。
なるほど。
つまり、ネットワーク番号+ホスト番号という形になれば、必ずユニークになる、と。
うむ。
ここから先は、IPでもちいられるIPアドレスについて説明する。
■ IPアドレス
IPで使われるアドレスだから、IPアドレスですか?
うむ、そのまんまだ。
さて、MACアドレスは16進数12ケタ、48ビットだったな。
えぇ。00-90-99-32-BA-FFと書くか、0090.9932.BAFFと書きましたよね。
IPアドレスは、今現在使われているバージョン4は32ビットだ。
今現在使われている?
じゃ、昔は違ったとか?
いや、逆だ。
過去ではなくて、未来にはバージョン6に変わる。だが、それはまだちょっとだけ未来の話だ。
そうなんですか。
なので、IPアドレスは32ビットと覚えておいて今の所問題ない。
32ビットだ。32ビット。
なんか、32ビットをやけに強調しますね。
うむ。
IPアドレスは、10進数で表記されるので、実体がビットであるということを忘れてしまうことがあるのだ。いいか、32ビットだぞ。
わかりましたって。
うむ、忘れるなよ。
つまり、以下のような形になる。
10101100000001010010001000001011 |
[Figure21-03:IPアドレス(2進数)]
う〜ん。
やはり人間に2進数は厳しいッスね。意味のあるものには見えないですよ。
そうか。
なら少し見やすくしてやろう。
10101100000001010010001000001011 |
[Figure21-04:IPアドレス(2進数・バイトで色分け)]
1バイトずつ色を変えてみた。
どうだ?
さっきよりは見やすいですけど。
まぁ、普通そうだな。人間は2進数を咄嗟に判断できるようにはできてないからな。
なので、実際にIPアドレスを表記する際は以下のようになる。
10101100 | . | 00000101 | . | 00100010 | . | 00001011 |
172 | . | 5 | . | 34 | . | 11 |
[Figure21-05:IPアドレス(10進数)]
つまり、バイトごとに10進数にして表記する。
そして各バイトの間にはドットを入れる。例えば、上の例ならば、172.5.34.11と表記するわけだ。
はわ〜。これならわかりやすいですね。
うむ。
この1バイトごとの区切りをIPアドレスではオクテットという。
おくてっと?
カルテットみたいですね。
そうだな。
カルテットは四重奏という意味だが、オクテットは八重奏という意味もある。
なるほど。8っていう意味なんですね。
8ビットだからオクテット、と。
この4つのオクテット、つまり32ビットで「何処」の「誰」、つまりネットワーク番号とホスト番号を表す。
つまり、こうだ。
ネットワーク番号 | ホスト番号 |
1010110000000101 | 0010001000001011 |
[Figure21-06:IPアドレスの意味]
ははぁ。先頭から16ビットがネットワーク番号で、残り16ビットがホスト番号なんですね?
いや、それはなんとなく適当な例だ。
実際は、クラスによって決まる。
くらす?
うむ、クラスだ。
というわけで、次回はIPアドレスの体系について話す。
おぅ、いぇ〜。
3分間ネットワーキングでした〜♪
- 接続点
- インタフェース[interface]といいます。
- アドレスの例
-
IPアドレスは今後説明します。
IPXは
ネットワークID+MACアドレス (32ビット+48ビット)
DDPは
ネットワーク番号+ノード番号 (16ビット+8ビット)
- バージョン6
-
[internet protocol version6]
IPv6と略される。バージョン4はIPv4。
32ビットから、128ビットまで拡張。そろそろ使われ始めている。
- オクテット
-
[octet]
[oct]は8の意味。8角形[octagon]とか。
ネットワークでは必ずしも8ビット=1バイトであるとは限らないものも存在するため、バイトという単位をここでは使っていない。
- ネット君の今日のポイント
-
- レイヤ3の論理アドレスは、
- 階層型である。
- ネットワーク管理者がアドレスを割り振る。
- デバイスの接続点ごとに1つ割り振られる。
- 場所に依存するので、場所が変わるとアドレスもかわる。
- ネットワーク番号は全ネットワーク内でユニーク。
- ホスト番号はそのネットワーク内でユニーク。
- IPアドレスは32ビット。
- 8ビットを1オクテットとして、4つのオクテットに分割して表記。
- 各オクテット毎に10進数にして、間に区切りのドットをつける。
- レイヤ3の論理アドレスは、