■ CST
ここまでSTPの説明を3回続けたわけだが。
まだまだSTPの話が続く。
は〜。長いッスね。
そうだな。さて、ネット君。
STPはもちろんブリッジ・スイッチで実行されるわけだな。
あ、はい。ですよ。
うむ。では、スイッチといえば、何かね?
あぁ、もちろん、今まで説明してきた中での話だ。
いままで説明してきた中で?
今まで説明してきたことといえば、キャンパスネットワークとVLAN…。VLAN?
まぁ、STP以外では事実上VLANしか話していないわけだから、VLANなのだが。
スイッチとブリッジの最大の違いと言えば、VLANを構成できるかどうか、という点がある、という話だ。
ははぁ。そういわれればそうですね。
もともとSTPはブリッジのころからあったモノだ。
なので、VLANが構成できるスイッチが登場すると、ちょっと問題になる事が発生した。
問題?
例えば、こうだ。
[FigureSW12-01:CST]
あらら。なんかずいぶんと遠回りしますね。
VLAN11があるのは、SW-CとSW-Dだけなのに。
うむ、確かに遠回りだな。
何故こうなる?
ん、ん〜っと。……、VLANとSTPが関係してないからですか?
そうだ。VLANの構成とSTPが無関係に存在するからだな。
つまり、VLANがどうあれ1つのSTPツリーだけで冗長構成をとっているからこうなる。
ははぁ。
このようなSTPをCSTという。
しーえすてー。
■ PVST
さて、CSTで起きたような遠回りを防ぐにはどうすればよい?
え〜っと。STPをやめる。
ネット君?
はい?
あいもかわらずシンプルかつ明確な答えだな。
現状を打破しようという発想が微塵も感じられない。
えへへ。
褒めてねぇ。
はぅっ。
ともかくだ。つまりSTPとVLANに関連をもたせればいいわけだな。
VLANの構成にあわせてSTPを構築すればいいわけだ。
VLANにあわせて、STPを設定…。具体的にはどのように?
簡単に言えば、VLANごとにSTPを構築すればいい。
それがPVSTだ。
ぴーぶいえすてー。
VLANごと(Per VLAN)のスパニングツリーですか。まんまですね。
CSTも共通(Common)スパニングツリーだから、そのまんまな名前といえばそうだな。
ともかくだ。VLANごとにルートスイッチ、プライオリティ、コストなどを設定し、個別のSTPを構築するのだ。
[FigureSW12-02:PVST]
は〜。完全に別のSTPが作られるってわけですね。
■ CSTとPVST
さて、このCSTとPVSTだが、どちらを運用するか決めるかというと、トランクで使うプロトコルで区別する。
トランクで使うプロトコルで区別ってことは。
ISLとIEEE802.1Qですか?
そうだ。まずIEEE802.1Q。
IEEE802.1Qでは、BPDUはVLAN1(Native VLAN)上を流れる。つまり?
ネイティブVLAN上を流れる?
ネイティブVLANを流れるってことは、タグがつかないってことですよね。
うむ。なので、どのVLANのBPDUか区別する方法がない。
よって、IEEE802.1QはCSTになる。
は〜。
一方のISLは必ずタグがつきますよね。どのVLANのBPDUか識別できるってことだから…。
そうだ。ISLではPVSTということになるわけだな。
なるほど。
このCSTとPVSTだが、どちらも一長一短がある。
PVSTのVLANごとにSTPを計算するということは、逆にいえばVLANが多いとスイッチにSTP計算の分負荷がかかるということだし。
でもCSTのように1つのツリーだけでは、最適なSTPになるとは限らず、遠回りばっかりするVLANが増える場合だってあるわけですよね。
うむ。さらに、CSTではどうしてもすべてのスイッチのことを考慮して考えなければならないため、コンバージェンスが遅くなるという点もある。まとめてみよう。
CST | PVST | |
---|---|---|
プロトコル | IEEE802.1Q | ISL |
ツリー | 1つ | VLANごとに1つ |
消費帯域 | STPが1つのため少 | STPごとにBPDUが必要なため大 |
計算量 | 少 | 大 |
最適パス | 場合によっては不可 | 可能 |
ツリー規模 | 大 | 小 |
[TableSW12-01:CSTとPVST]
と、こうなるわけだ。
へ〜。ほんとに一長一短というか、裏表なんですね。
■ PVST+
ただ、やはり最適なパスで運用するという点を考えると、PVSTの方が優れている、と言えるだろう。
なので、やはりISL + PVSTという形になる、わけだが…。
わけだが?
ISLはやはりCisco独自。現在の主流のVLANタギングプロトコルはIEEE802.1Q、IEEE標準なのだよ。
でも、IEEE802.1QではCSTしか使えないんでしょ?
うむ。なので、CiscoとしてはIEEE802.1QでもPVSTを使いたい、と考えたわけだ。
その結果生まれたのが、PVST+だ。
ぴーぶいえすてー・ぷらす?
そうだ。PVSTを拡張し、IEEE802.1Q環境でもPVSTを使用可能にしたわけだ。
PVSTとCSTの下位互換として運用される仕組みになっている。
下位互換ってことは、PVST環境でも、CST環境でも使えるってことですよね。
ISL環境ではPVSTとして動作し、IEEE802.1Q環境ではPVST+として動作するわけだ。
動作を簡単に説明すると、まずVLAN1、つまりネイティブVLAN上ではCSTが動作している。
CSTが動作している?
うむ。CST BPDUと呼ばれる、1つのSTPを作り出すためのBPDUが交換されているわけだ。
このBPDUはVLAN1のみ、CSTで作られたツリーはVLAN1専用のツリーとして扱う。
VLAN1専用…他のVLANは?
他のVLANでは、タギングされたPVST BPDUをトランク上で流す。
PVST BPDUにより、VLANごとのツリーが作成されるわけだ。
は〜。
と、このようにIEEE802.1Q環境でもVLAN単位にSTPを構築するわけなんだが。
わけなんだが? まだ問題があるんですか?
問題があるわけではないな。
IEEEの方でも、VLAN単位にSTPを構築せねば〜と、MSTというのを作った、という話がしたかったわけなんだよ。
まるちぷるすぱにんぐつりー?
スパニングツリーがマルチなんですか?
マルチに存在、複数存在するスパニングツリーというわけだ。
これに関しては、まぁ、BCMSNの範囲からはずれるので、省略だな。 ▼ link
省略ッスか。
うむ、PVST+はツリーを複数持ちすぎる、という弱点を抱えてしまっている。
MSTではこれを解消している、というのが特徴だな。
はぁ。
ま、ともかくだ。
CST、PVST、PVST+。それぞれの特徴を覚えておけばいい。
そういうもんですか。
そういうもんだ。
さて、今回はこれぐらいにしておこう。
あい。
まだまだ次回もSTPだ。
いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- CST
- [Common Spanning Tree]
- PVST
- [Per VLAN Spanning Tree]
- CST BPDU
- 宛先としてIEEE標準STP用の、01-80-c2-00-00-00のアドレスが使用される。
- PVST BPDU
- こちらはCiscoのSTP用、01-00-0c-cc-cc-cdがアドレスとして使用される。
- MST
-
[Multiple Spanning Tree]
IEEE802.1s。
RSTP(Rapid STP)を前提とした、VLAN対応のSTP。
- ハイパーネット君の今日のポイント
-
- IEEE802.1Qがトランクとして使用されている場合、CSTが使用される。
- VLANとは関係なく、1つだけツリーを持つ
- VLANによっては最適なパスを使用できない。
- ISLがトランクとして使用されている場合、PVSTが使用される。
- VLANごとに1つのツリーを持つ。
- ツリーの数が多くなりすぎて、負荷がかかる場合がある。
- IEEE802.1QでもPVSTが使えるように拡張されたのがPVST+。
- IEEE802.1Qがトランクとして使用されている場合、CSTが使用される。
- 参考リンク
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- Multiple Spanning Tree Protocol(802.1s)の概要http://www.cisco.com/japanese/warp/public/3/jp/service/tac/473/147-j.shtml▲