■ VTPバージョン
さて、スイッチ間で動的にVLAN情報を管理するためのプロトコルがVTPだったな。
VLAN情報用のルーティングプロトコルですよね。
うむ。正確にはルーティングプロトコルと違うが、まぁ、そんなものだろう。
このVTPだが2つのバージョンが存在する。バージョン1とバージョン2だ。
へぇ。新しいバージョンがあるんですね。
そういうことだ。それで………。
すまん。忘れとった。バージョン3もある。
ははぁ。3つですか。で、どう違うんです?
それは説明するが、まず先に言っておくと、今回バージョン3の説明はしない。
バージョン1・2とバージョン3では大きく違うのでな。
そうなんですか? ついでに説明しちゃってくださいよ。
いや、話すと長いし、BCMSNの範囲外だしな。すまんが省略だ。
バージョン1と2の説明をする。 ▼ link
はいな。
デフォルトはバージョン1で、以下の項目がバージョン2で新たにサポートされた内容だ。
- 認識不可能なType-Length-Value(TLV)のサポート
- バージョン依存型トランスペアレントモード
- 一貫性検査
- トークンリング環境のサポート
う〜ん。いまいちどうもさっぱりです。
まぁ、ネット君がさっぱりなのはいつもの事だが、今回の件に関しては説明しよう。
まず、「認識不可能なTLVのサポート」。これはスイッチが理解できないTLVもそのままアドバタイズするということだ。
へ〜。で、TLVってなんです?
あぁ。ヘッダ内の特定のどの値、という名前ではなくて。タイプ、データの長さ(Length)、値(Value)という形式で書かれているものをTLVというのだよ。要はサブセットアドバタイズメント内のVLAN情報のことだ。
ならそう書けばいいのに。
まぁまぁ。次が「バージョン依存型トランスペアレントモード 」。VTPv1ではトランスペアレントスイッチは、VTPバージョンとドメイン名をチェックしてアドバタイズするが、VTPv2ではしない、ということだな。
ふむふむ。
「一貫性検査 」は、VTP以外、つまりコマンドでの直接入力や、SNMPでの設定変更の場合、その変更内容があっているかどうかチェックするということだ。
VTPv1ではしないんですか?
しない。
最後の「トークンリング環境」だが、これはそのままトークンリングでVTPを使いたい場合、VTPv2でなければならない、というということだ。
ははぁ。
特にVTPv2を使う理由としては、最後の「トークンリング環境」のサポートが大きいらしいぞ。
さらに、VTPv2では、VTPv2を使うと設定したこともアドバタイズされる。
ということは、それを受け取ったスイッチは、自分もVTPv2に変更するってことなんですか?
そういうことだな。
なるほど。
■ VTP設定の手順
さてさて。ではVTPを設定する際の手順を説明しよう。
手順?
うむ。まず、VTPドメインには最低1つ以上のサーバが必要だ。
できれば2台だな。
最低1台必要なのはわかりますが、なぜ2台?
もちろん、バックアップのためだ。クライアントモードのスイッチでは設定を記憶しないからな。
1台のみの場合、そのスイッチがダウンした場合、再設定が大変だからな。
ばっくあっぷ。なるほどです。
サーバと名のつくものはすべからくバックアップサーバが必要なのだよ。
ともかく、1台できれば2台以上のサーバと、残りはクライアント、というVTPドメインがオススメだな。
少数のサーバと、多くを占めるクライアントですね。
PCのネットワークと変わらないですね。
まぁ、そうとも考えられるな。
あとは、VTPバージョンも考えておく必要がある。VTPv2にするかしないか、だな。
さっきでてきましたよね。
うむ、さきほどのVTPv2でのサポートされるものを必要とするかしないかできまる。
さて、まず1台のサーバを作り上げるわけだが、その後のスイッチの追加には注意事項がある。
注意事項?
クライアントモードに設定して、サーバからアドバタイズを受け取ればそれで万事OKってわけじゃないんですか?
いや、確かにアドバタイズを受け取ればOKなのだが。
まず、事前に今まで持っていたVLAN情報をすべて消去しなければならない。
??
そのスイッチがいままでサーバモードだったりしたらどうする? そのスイッチはすでにVLAN情報を持っていることになるだろう?
そしてそのリビジョン番号がとても大きなものだったりしたら?
[FigureSW08-01:VLAN情報の混乱]
ありゃりゃ。こりゃよろしくないですね。
だろう?
なので、新規に追加するスイッチは、事前にVLAN情報を削除し、リビジョン番号を0に戻しておく必要があるのだよ。
その手順は以下の通り。
- LANに繋いでいない状態で立ち上げる
- clear config all コマンドでVLAN情報を削除する
- 電源を落とし、リビジョン番号を0に戻す
- クライアントモードに設定し、LANに接続する
clear config allコマンドだけじゃ、リビジョン番号は0にならないんですか?
ならない。必ず一度電源を切らないとリビジョン番号は0にならないので要チェックだ。
ははぁ。
さらに、サーバモードで使うとしても、一度クライアントモードで接続する方がいいだろう。
クライアントモードで、既存のサーバから情報を入手した上で、サーバモードに変換するのだ。
なるほど。
■ VTPプルーニング
さて、ネット君。VTP、VTPと説明してきたが、具体的にVTPが果たす役割について1つ説明しよう。
VTPプルーニングだ。
ぷるーにんぐ?
そうだ。
ネット君。複数スイッチ間でのVLAN内のブロードキャストはどう動く?
どうって?
ブロードキャストだから同じVLANに伝播されますよね。
そうだな。つまり、こういうことだな。
[FigureSW08-02:VLANブロードキャスト]
まぁ、こうなりますよね。
SW-EとSW-FにはVLAN10はないんだぞ? 無駄じゃないか?
またでましたね、博士の「無駄」が。
確かに無駄ですけど。
では、何が問題だ? どうやったらSW-EとSW-Fに不必要なフレームが届かなくなる?
どうやったらって。
そうですね、SW-BとSW-CがVLAN10に関係ないSW-EとSW-Fにブロードキャストを届けなければいいですよね。
そうだ。その通り。
では、そのために何が必要だ?
何が必要って……。なんだろ?
つまり、SW-BとSW-Cが、「SW-EとSW-Fにはこのブロードキャストの宛先(VLAN10)がない」と知ってればいいわけだよな。
そう…ですね。他のスイッチが接しているVLANの情報を持っていれば……。
だから、VTPってことですか?
うむ。VTPで、VLAN情報を共有することによって、他のスイッチが接しているVLAN情報が入手できるわけだ。
これを使って、宛先が存在しないスイッチにはブロードキャストを送らないことを行う。これがVTPプルーニングだ。
[FigureSW08-03:VTPプルーニング]
宛先の存在しない「枝を払う[prune]」、ということだな。
だから、VTPプルーニング。
なるほど。
もちろん、特定のVLANをプルーニングの対象からはずす、という設定も可能だ。
例えば、VTPアドバタイズメントが流れるVLAN1、もしくはVLAN1から変更した管理VLANはプルーニング非対象だ。
管理VLANのフレームが届かないと困りますよね。
そういうことだな。さて、今回はこれぐらいにしておこう。
はいはい。
次回からはまた別の話だ。
いぇっさ〜。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- 省略
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CatOS8.1(1)以降でのみ使用可能です。
概略は参照リンクのCat4500・2948G/2980Gのコンフィギュレーションガイドを見てください。
- VTPプルーニング
-
[VTP Pruning]
pruneは「(枝などを)切り落とす」「(費用を)切り詰める」などの意味。
- プルーニングの対象からはずす
- [pruning-ineligible]
- ハイパーネット君の今日のポイント
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- VTPにはバージョンが1〜3まである。
- VTPバージョン2は1で非対応な事までサポートしている。
- VTPをスイッチに設定する場合は、かならずVLAN情報を消してから行う。
- リビジョン番号を0に戻すため、電源を一度切ることが必要。
- ブロードキャストの宛先VLANが存在しないスイッチへフレームを送らないようにするのがVTPプルーニング。