■ ブロック
さて、前回、キャンパスネットワークにおけるブロックの話をしたよな。
アクセス層とディストリビューション層のスイッチブロック。
コア層のコアブロックですね。
うむ。こういう図を出したな。
[FigureSW02-04:コアブロック]
ユーザのPC群がいて、他ブロックとの接続を行うためのMLSがあるスイッチブロック。
各スイッチブロックを接続するコアブロック、だったな。
です。
さて、もちろんこの2つだけでもいいのだが。
スイッチブロックの中に特殊な役割を担うものがある。
スイッチブロックの中に?
そうだ。それはエンタープライズサーバがあるブロックと、WAN接続へのブロック、が代表的だ。
エンタープライズサーバって、全社的に使用するサーバのことですよね。
そう、両方とも全社からのアクセスが前提として存在するブロックだ。
これらのブロックはコア層に位置する。
コア層にあるのはコアブロックなのでは?
うむ、なので「特殊な」と言ったのだ。
なのでサーバブロック、WANブロックと別な名前をつけて呼ぶことが多い。
[FigureSW03-01:サーバブロックとWANブロック]
ユーザが使うスイッチブロックとはまた別のブロック、ってことですね。
■ イーサネット
さて、キャンパスネットワーク内で使われるアーキテクチャはもちろん、イーサネットだ。
ですよね。
ここでイーサネットの仕組みやら、CSMA/CDがどうとか説明してもしょうがないのでしないが、…大丈夫だよな?
博士、それはいくらなんでもアレですよ。
いやまぁ、確かに普通ならそうだが。なんといっても相手はネット君だからな。念には念を入れておかないと。
まぁ、ともかく、キャンパスネットワークでのイーサネット使用のポイントはこうだ。
- 10Mbps
- 最長セグメント長100m(10BASE-T)
あれ、10BASE5や10BASE2は?
今時ないだろう、同軸は。
そんなことを言ったら、今時に単なる「イーサネット」ってのもどうかと思いますよ。
まぁ、確かにそうなんだが。
それでも、10Mbpsあれば結構使えるぞ。アクセス層ならば。
アクセス層ってことは、ユーザが使うPC間ではってことですか。
そういうことだ。特にスイッチを使ったコリジョンフリー環境で、全二重化するならば、10Mbpsでも十分使える。
スイッチを使ったコリジョンフリーってことは、10Mbpsを占有できる。
全二重化では論理的に倍の帯域幅を持つことになる…、ですか?
そういうことだ。ユーザが使用するPCという環境で、占有した20Mbpsの帯域幅ってのはそれなりに役に立つぞ。
複数のPCのデータが流れるディストリビューション層やコア層はまた別の話になるがな。
なるほど。
あと1つ。最長セグメント長の100mの内訳ってのを説明しておこう。
[FigureSW03-02:最長セグメント長]
5m、90m、5mで100m。
そういうことだ。ノイズの発生しやすいワイヤリングクロゼットやフロア内ではなるべく短く、というところがポイントだ。
へ〜。これは守るべきことなんですね。
まぁ、できれば、の話だ。
情報コンセントにワイヤリングクロゼットなんてものがちゃんと配置できれば、な。
それがなかなか難しそうですよ。
■ ファストイーサネット
さてさて、実際、市販されているものでもっとも主力の扱いを受けているイーサネットがファストイーサネットだろう。
そうですね。イーサネット仕様のNICやらハブやらを探すほうが手間ですものね。
そのファストイーサネットのポイントと言えば。
- 100Mbps
- イーサネットとの下位互換
- オートネゴシエーション
だな。現在では普通のユーザが使うPC間接続までファストイーサネットを使うことが珍しくない。
ですね。アクセス層でもファストイーサネットってことですね。
あとはアクセス層とディストリビューション層をつなぐのにもやはりファストイーサネットが有効だろう。
複数のPCのデータが集結するわけだからな。
広い帯域がないと、そこがボトルネックになっちゃいますもんね。
さらに、やはり下位互換ってのが強いな。
特に設定や環境を変更することなく、スムーズにファストイーサネットへ移行できる。
いちいち変更しなくていいってのは楽ですよね。
まぁ、ここらへんはよくあるファストイーサネットの話なのでサクっと飛ばしたが。
オートネゴシエーションについては説明しておこう。
おーとねごしえーしょん。
ネゴシエーションは「交渉」だから、「自動交渉」?
そうだ。NICとスイッチ間では使用する速度、通信方式が一致しなければいけない。
つまり、イーサネットかファストイーサネットか。半二重か全二重か、この2つについて一致させる必要があるわけだ。
なるほど。
それを自動で一致させる機能がオートネゴシエーションだな。IEEE802.3uで規定されている。
BCMSNの範囲ではないが、一応オートネゴシエーションの仕方を説明しておこう。
[FigureSW03-03:オートネゴシエーション]
へ〜。データがなくても信号を流していて、それを基準に決めるんですか。
そういうことだな。
オートネゴシエーション同士の場合、自身が使用可能な設定を通知するわけだが、これには優先順位がある。
優先順位?
そうだ。この優先順位が高いものから、双方が一致したものを選ぶ。
CiscoのCatlystスイッチの場合、以下の順番になる。
優先順位 | 通信規格 | 通信方式 |
---|---|---|
A | 100BASE-TX | 全二重 |
B | 100BASE-T4 | - |
C | 100BASE-TX | 半二重 |
D | 10BASE-T | 全二重 |
E | 10BASE-T | 半二重 |
[TableSW03-01:オートネゴシエーションの優先順位]
Aが一番優先順位が高い。
100BASE-T4には通信方式がありませんけど?
100BASE-T4は半二重しかないからな。
■ ギガビットイーサネット
さてさて、もう1つイーサネットの規格を説明しておかないとな。ギガビットイーサネットだ。
- 1000Mbps
- イーサネットとの下位互換
スピードがあがったくらいで、あまり変わりない?
技術的には結構大きく変わっているのだが、使用する分にはスピードの違い以外はあまり目立たなくなっている。
大きな違いは、メディアだな。イーサネット・ファストイーサネットはツイストペア(UTP)が主力だが、ギガビットでは光ファイバもよく使われる。
通信規格 | カテゴリ | セグメント長 |
---|---|---|
1000BASE-CX | STP | 25m |
1000BASE-T | UTP(カテゴリ5以上) | 100m |
1000BASE-SX | マルチモード・光ファイバ | 260m |
1000BASE-LX | シングルモード・光ファイバ | 3km(Ciscoでは10km) |
[TableSW03-02:ギガビットイーサネット規格]
ファストイーサネットの普及により、トラフィックが集中するところにはこのギガビットを使うことがオススメだ。
集中するところ、って。
ディストリビューション層、コア層?
あとはサーバブロックやWANブロック内もそうだ。
あぁ、なるほど。
■ イーサネット実装
上記3種のイーサネットだが。
これをキャンパスネットワークにどう実装していくか、というのがポイントになるわけだ。
帯域が広いものをトラフィックが集中するところに持っていくってことですね。
そうだ。
レイヤ | イーサ | ファスト | ギガビット |
---|---|---|---|
アクセス層 | ○ | ○ | - |
ディストリビューション層 | × | ○ | ○ |
コア層 | × | ○ | ○ |
[TableSW03-03:イーサネットの運用]
これだと、ディストリビューション層とコア層が一緒ですね。
まぁ、そうなるな。できればアクセス・ディストリビューション・コアの順で、イーサ・ファスト・ギガとあがっていくのがいいのだが。
ユーザが使うレベルでもトラフィックが増えてきているから、アクセス層でもファストイーサがいいだろう。
と、なるとディストリビューション層もギガビットイーサですか?
そうだな。理想を言えばそうだ。
まぁ、まだギガビットは高いし、ディストリビューション層のデバイスは数も多くなるのでなかなか難しいところだな。
そうですね。
ギガビットまでいかなくても、ファストイーサのEther Channelという手もある。
ともかく、トラフィックパターンから使うべきものを選んでいく、という形になるわけだ。
ふむふむ。
そうだな、一番最初に使った図を元にして説明してみよう。
[FigureSW03-04:イーサネット実装]
トラフィック量を色分けしてみた。
青→橙→赤の順でトラフィックが集中する。
アクセス層のPCたちが一番少なくって。ディストリビューション層のMLSへの接続、ブロックをつなぐ接続やサーバ・WANの接続って順ですか。
そういうことだ。
なるほどです。
うむ。
さて、今回はここまでにしておこう。
了解ッス。
30分間ネットワーキングでした〜♪
- 100BASE-T
-
100BASE-TXは2対(送信・受信)ですが、100BASE-T4は4対すべて使います。
1対(送信)・1対(受信)・2対(送受信切り替え)で4対。
- Ether Channel
- 複数のリンクを1つのリンクとみなす方式。後述。
- ハイパーネット君の今日のポイント
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- 3種類のイーサネットを使い分ける。
- イーサネットはアクセス層向け。
- ファストイーサネットはどの層でもよい。
- ギガビットイーサネットはディストリビューション・コア層向け。
- トラフィックの集中度合いにより、帯域幅を決めていく。
- 3種類のイーサネットを使い分ける。