30 Minutes NetWorking
No.RT32

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BSCI

第32回再配布(3) ルーティングループ

■ ルーティングループ

スーパーインター博士

再配布の話を続けよう。
何かしらの理由により、複数のルーティングプロトコルを使う必要があるわけだ。

ハイパーネット助手

システムの移行中とか、ルータが新しいIGPに対応してないとかですね。

スーパーインター博士

うむ。そのような場合だな。
で、再配布を行うわけだが、再配布には実は致命的な問題点が発生する。

ハイパーネット助手

致命的?
なんかすごそうですね。

スーパーインター博士

まず1つ。IGPのコンバージェンス速度の違いがある。
例えば、RIPのネットワークとOSPFのネットワーク、コンバージェンスはどちらが早い?

ハイパーネット助手

そりゃOSPFですよ。

スーパーインター博士

そうだ。そうなると、かなり極端だが、このようなことが発生することにならないか?

[FigureRT32-01:IGPコンバージェンス速度の違い]

ハイパーネット助手

ふ〜ん。つまり、再配布も含めた全体のコンバージェンスが出来てないってことですかね。

スーパーインター博士

そうだな。部分部分でコンバージェンスの速度が違うと、単一のルーティングプロトコルでは考えられなかった事も起きうる、ということだ。

ハイパーネット助手

ふむふむ。
で、さらに?

スーパーインター博士

さらに? 何故さらにあると思うのだね?

ハイパーネット助手

だって博士、さっき「まず1つ」って言ってたじゃないですか。

スーパーインター博士

あぁ、そういえば、そう言ったな。
うむ、そしてもう1つ。ルーティングループが発生する可能性がある。

ハイパーネット助手

るーてぃんぐるーぷ!!

スーパーインター博士

うむ、さすがのネット君もルーティングループの恐怖をわかっているようだな。

ハイパーネット助手

ルーティングプロトコルって、何かと言うと「ルーティングループ」ですからね。
今までに何回聞いたんだろう?

スーパーインター博士

それは確かにそういう傾向があるかもしれん。
さて、再配布におけるルーティングループとは、こうだ。

[FigureRT32-02:再配布によるルーティングループ]

ハイパーネット助手

お〜。これ以上ないってくらいループしてますねぇ。

■ ルーティングループの防止

スーパーインター博士

ネット君、何が問題になっているかわかるか?

ハイパーネット助手

ええっと。
管理距離シードメトリックですか?

スーパーインター博士

確かにその通り。

ハイパーネット助手

じゃ、それを変えてしまえば、再配布によるルーティングループは防げるわけですね?

スーパーインター博士

そう簡単な問題ではない。
確かに、このルーティングループは管理距離とシードメトリックを変更すれば収まるかもしれん。

ループの防止:管理距離の変更

[FigureRT32-03:ループの防止:管理距離の変更]

ループの防止:シードメトリックの変更

[FigureRT32-04:ループの防止:シードメトリックの変更]

スーパーインター博士

だが、シードメトリックや管理距離は、再配布全体に影響を及ぼすことが多いので、そう軽く変更するのは危険だ。他の場所でルーティングループを引き起こす可能性がある。

ハイパーネット助手

う〜ん。
じゃあ、どうすればいいんですか?

スーパーインター博士

再配布を行わない。これにつきる。

ハイパーネット助手

……。博士?

スーパーインター博士

何かね?

ハイパーネット助手

もしかして、僕を莫迦にしてますか?

スーパーインター博士

それは至極当然のことだ。だが、今回は別に莫迦にして言ったわけではない。
つまり、なるべく再配布はしない方が望ましいということだ。

ハイパーネット助手

いやまぁ、確かにそうですけど。

スーパーインター博士

しなければならない場合、管理距離やシードメトリックを慎重に決定したりだな。
再配布の方向を片方だけにすることでもループは防げる。

ハイパーネット助手

片方向だけ?

スーパーインター博士

例えば、先ほどの例でいえば、RIP→OSPFだけにするとかだな。

ループの防止:片方向再配布

[FigureRT32-05:ループの防止:片方向再配布]

ハイパーネット助手

へぇ。でも、これっていいんですか?

スーパーインター博士

まぁ、環境によるな。どうしても両方向の再配布をしなければならない場合もある。
その場合は、スタティックルートやデフォルトルートを上手く使うことにより、防げることもある。

ハイパーネット助手

ははぁ。

スーパーインター博士

さらに、先で説明するが、ルートフィルタリングを使って防ぐことも可能だな。

ループの防止:ルートフィルタリング

[FigureRT32-06:ループの防止:ルートフィルタリング]

ハイパーネット助手

なるほど、RIP-ASの情報をさらにRIP-ASに再配布しないように止めてしまうんですね。

スーパーインター博士

そういうことだ。
くどいようだが、再配布は慎重にってことだ。

ハイパーネット助手

なるほどです。

■ スタティックルート再配送

スーパーインター博士

さて、今まで再配送という言葉は、あるルーティングプロトコルを他のルーティングプロトコルで送る、という形の説明だったな。

ハイパーネット助手

でしたね。
他にも再配送があるんですか?

スーパーインター博士

まぁ、簡単に説明するために、あるルーティングプロトコルを他のルーティングプロトコルで送ることを再配送といったが、実際はソースが異なる情報を配布する、という意味なのだよ。

ハイパーネット助手

ソースが異なる?

スーパーインター博士

うむ。つまり、RIP、OSPFのようなIGPで入手した情報を再配布するように、スタティックルートをルーティングプロトコルで再配送することもできる、ということだ。

ハイパーネット助手

あ〜なるほど。そのルートを何によって手に入れたかってのがソースってことですね。
で、それはルーティングプロトコル以外でもよい、と。

スーパーインター博士

うむ。そのルータが持つスタティックルートを再配布したい場合は、こうだ。

  • Router(config-router)#redistribute static [metric metric-value] [metric-type metric-type] [route-map map-tag] [subnets]
スーパーインター博士

基本的に前回出てきたredistributeコマンドで、static、とやればよい。
もちろん、シードメトリックやメトリックタイプも設定する必要がある。

ハイパーネット助手

前回のredistributeコマンドで、protocolの所をstaticにするんですね。

■ デフォルトルート

スーパーインター博士

さて問題は、特別なスタティックルートであるデフォルトルートだ。
なんともややこしいが、デフォルトルートのコマンドは2種類ある。まず。

  • Router(config)#ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 Next-Hop
ハイパーネット助手

スタティックルートを設定するコマンドで、0.0.0.0を指定するやつですよね。

スーパーインター博士

うむ。そしてもう1つ。

  • Router(config)#ip default-network network-address
ハイパーネット助手

あいぴーでふぉるとねっとわーく。
どう違うんですか、これ?

スーパーインター博士

まぁ、基本的にスタティックにルータにデフォルトルートを設定する場合は、「ip route 0.0.0.0 0.0.0.0」を使うのだが。
ip default-networkはデフォルトルートをアドバタイズする時に使用する。

ハイパーネット助手

へへぇ。

スーパーインター博士

ip default-networkコマンドで指定されたネットワークへのパスをラストリゾートゲートウェイとみなすようになる。
しかし、困ったことにルーティングプロトコルによって扱いが違う。

ハイパーネット助手

どのように違うのですか?

スーパーインター博士

うむ。まずIGRP。
IGRPでは0.0.0.0のルートをアドバタイズしない。よって、ip default-networkコマンドでデフォルトルートを通達しなければならない。

ハイパーネット助手

ふむ。

スーパーインター博士

その拡張、EIGRPも同様だ。
ただし、EIGRPの場合、0.0.0.0というスタティックルートを再配送する、という設定により0.0.0.0のルートを通達することができる。

ハイパーネット助手

ふむふむ。

スーパーインター博士

次、OSPF。OSPFはASBRでのみデフォルトルートの配送が可能だ。
その場合、以下のコマンドが必要になる。

  • Router(config-router)#default-information originate
スーパーインター博士

ただし、スタブエリア内へのデフォルトルートの配送は、ABRが自動的に集約LSAでデフォルトルートを通達する。

ハイパーネット助手

うぅぅぅ。

スーパーインター博士

最後、RIP。
RIPは0.0.0.0でも、ip default-networkでもデフォルトルートを通達できる。
正確に言えば、0.0.0.0を作成するというのが正しいかな。

ハイパーネット助手

ううぅぅぅぅぅ。

スーパーインター博士

どうした、ネット君。

ハイパーネット助手

博士、まとめてください。

スーパーインター博士

我侭な奴だな。
まぁ、確かにややこしいからまとめてやろう。

Protocolip route 0.0.0.0ip default-network詳細
IGRP配送しない配送する 
EIGRP配送しない配送する0.0.0.0を通達したかったらスタティック再配送の設定が必要
OSPFASBR配送する default-information originateが必要
ABR  スタブエリアに対して集約LSAでデフォルトルートを配送
RIP配送する配送する 

[TableRT32-01:デフォルトルートの再配布]

ハイパーネット助手

うぅぅぅぅ。

スーパーインター博士

人にまとめさせておいて、それはなんだ。

ハイパーネット助手

わかったような、わからないような。

スーパーインター博士

かなりややこしいからな。これはじっくり試しながらやっていくのがいいだろう。

ハイパーネット助手

う〜ん。

スーパーインター博士

さて、今回はこれぐらいにしておこう。

ハイパーネット助手

はい。

スーパーインター博士

次回も再配送がらみの話だ。
では、また次回に。

ハイパーネット助手

了解です。
30分間ネットワーキングでした〜♪

ルートフィルタリング
[Route Filtering]
ルーティングアップデートに対し、フィルタリングを行う。
詳しくは後述。
ルーティングループ
この再配送で起こるルーティングループは、ディスタンスベクタでおこるルーティングループと区別して、ルートフィードバック[Route Feedback]とも呼ばれます。
ラストリゾートゲートウェイ
[Last Resort Gateway]
「最後の手段」のゲートウェイ。
ハイパーネット助手ハイパーネット君の今日のポイント
  • 再配送ではコンバージェンスの違いにより不都合が起きる可能性がある。
  • 再配送ではルーティングループが発生する可能性がある。
    • シードメトリックと管理距離の設定を慎重に。
    • スタティックルートやルートフィルタリングでループを防止。
    • 再配送はなるべくしないほうがよい。
  • デフォルトルートの設定はルーティングプロトコルによって異なる。

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管理人:aji-ssz(at)selene.is.dream.jp